「労契法20条裁判」―非正規雇用撤廃

制度・政策

「労契法20条裁判」―非正規雇用撤廃!

司法を超える労働運動を

 10月13と15日。労働運動に重大な影響を及ぼすと言われた三つの最高裁判決が下りた。①賞与の格差を問題にした大阪医大、②退職金の格差を問題にした東京メトロコマース、③扶養手当などの諸手当の待遇格差を争った郵政の三つの裁判。
 あまりにひどい格差の中で、これらの裁判は、非正規の決起・結集軸の一つとして闘われてきた。労働契約法20条にある「有期か否かによって不合理な差別をしてはいけない」という立法趣旨を土台にして、正社員との格差是正を求める裁判として6年を超えて闘われ、大きな注目を集めてきた。

〝非正規の賞与・退職金は0円でいい〟

 ①②については、最高裁は「一般論的では、退職金を非正規労働者に支給しないと不合理になることはありうるとしながらも」としたが今回のケースは「不合理な格差とまでは言えない」と高裁の判断をひっくり返した。原告の当該や弁護団も予想しなかった逆転反動判決だ。
 ①では、高裁は「賞与は正社員の6割」という判決だったが、最高裁は「0円」。②でも、退職金は「正社員の4分の1」という高裁判決を認めない「0円」判決だ。退職金や賞与は後払いされる賃金の一部だ。
 安倍前首相でさえ「同一労働同一賃金の実現を」と謳い、「非正規の賃金を欧州並みの8割に」と建前で言っていた。まったく同じ仕事をしながら「0円」では合理的な説明がつかない。「ボーナスも退職金もなくて当然」という判決だ。菅政権によるウルトラな政治的判決と言わざるを得ません。

手放しに勝訴とは言えない郵政判決

 他方、郵政判決は格差が不合理として原告の主張が認められ、「退職金・賞与はダメでも手当は認められた」とマスコミは印象付けました。しかし、核心部分には手を付けさせなかったということだ。
 担当した河村弁護士は「判決は画期的で格差是正の足がかりになる。しかし差別の中心である基本給・賞与・退職金について最高裁は取り上げなかった」と語る。この意味では3つはワンセットの判決なのだ。
 ジャーナリストの竹信三恵子氏は「2年前のハマキョウレックス事件や長澤運輸事件と同様に、手当は働く上での費用(経費)。賞与や退職金は賃金の変形→賃金は『評価』なので評価権を会社は手放さない」と解説している。
 日本郵政は「均衡待遇」と称して新一般職という限定正社員制度をつくり、手当などをなくして正規を非正規に近づけている。会社全体から見れば正社員の賃下げで、6割超の非正規に「是正」と称して涙金程度の手当を与えてごまかたにすぎない。

原点に返って非正規職撤廃の闘いを

 非正規労働者は全体の4割、2千万人に及ぶ。いまや非正規労働者が社会を回していると言っても良い。正社員と比較して責任がないとか一時的限定的とはえいない。裁判の原告たちは10年以上も契約を更新し、正規と同じように働いてきた労働者だ。
 同時に、今回の最高裁判決は非正規・女性への差別的判決とも言える。「女性は手当がなくて当然」という偏見に満ちている。女性の非正規率は56・4%。非正規問題は女性の問題と密接な関係だ。過去20年間、世界と比較して日本だけが賃金が減り続けてきたのは女性の非正規化に核心がある。非正規の闘いを作っていかねばならないとあらためて思う。(組合員K)

 ちば合同労組ニュース 第123号 2020年10月1日発行より