〝労働時間〟概念破壊にノーを

制度・政策

〝労働時間〟概念破壊にノーを

厚労省検討会 裁量労働拡大の報告書

写真:1919年の川崎造船所争議の結果、日本初の8時間労働制が実施されたことを記念して建立「8時間労働発祥之地」(神戸市)

 厚生労働省は7月15日、裁量労働制のあり方などを検討してきた有識者会議「これからの労働時間制度に関する検討会」における論議の報告書を公表しました。
 報告書は、少子高齢化や産業構造の変化が進み、デジタル化の加速や新型コロナ感染症の影響による生活・行動様式の変容が、労働者の意識や働き方、企業が求める人材像にも影響しているとして、新しいニーズに対応できる労働時間制度の整備を提唱しています。
 18年に成立した「働き方改革関連法」では、「残業代ゼロ制度」と批判された高度プロフェッショナル制度と共に裁量労働制の適用の大幅拡大も画策されました。
 しかし、その根拠となった統計調査の偽造(裁量労働制の適用労働者の方が非適用者より労働時間が短くなるように数値が偽装された)が発覚し、裁量労働制が取り下げられた経緯があります。
 高プロ制度は今年3月末時点で、全国わずか21社の導入にとどまり、適用労働者も665人しかいません。
 検討会は、これらのリベンジを期してあらためて裁量労働制の拡大を突破口に労働時間規制の全面緩和に向けた議論を進める意図を持っているのです。
 裁量労働制とは、あらかじめ定めた時間を働いたとみなす制度です。現状の制度では対象は少なく、研究職やデザイナー、記者や弁護士などの「専門業務型」、企業本社における新規事業の企画・立案などの「企画業務型」の2タイプで厳格な手続きも必要です。
 これを大きく規制緩和し、営業職全般や非管理職である主任・班長クラスの労働者を裁量労働制の対象とすることを狙っているのです。

労働時間とは何か?

 これは労働基準法が実労働時間管理を前提とした労働時間規制の原則を崩すもので、労働時間という考え方・概念自体を破壊し、労働運動の長年の成果でもある「8時間労働制」を覆すものです。
 労働時間とは使用者の指揮監督下にある時間であり、メーデーにおいて「第一の8時間は仕事のために、第二の8時間は休息のために、残りの8時間は、俺たちの好きなことのために」を目標に行われました。〝時間〟という概念はけっしてゆるがせにできない問題なのです。

 ちば合同労組ニュース 第145号 2022年8月1日発行より