へき地医療機関への看護師等の派遣 医療機関以外への日雇派遣が解禁に

連載・職場と労働法

へき地医療機関への看護師等の派遣
医療機関以外への日雇派遣が解禁に

 

 今年4月から労働者派遣法の施行令が改定され、へき地の医療機関への看護師等(看護師・准看護師・薬剤師・臨床検査技師・診療放射線技師)の派遣と、社会福祉施設等への看護師の日雇い派遣が解禁された。
 これまでも直接雇用への移行を前提とした紹介予定派遣、産休・育休の代替、社会福祉施設や保育園など医療機関ではない施設への派遣はすでに規制緩和されていた。だが医療機関での看護師業務・診療補助等の業務の派遣労働は原則禁止だった。

 

へき地医療への派遣

 

 今回の解禁は、へき地における医師や看護師などの医療従事者の人員不足が理由とされる。派遣が可能な「へき地」の範囲は、法律で規定された奄美や小笠原など「離島」「辺地」「振興山村」「過疎地域」だ。また派遣に当たっては、へき地の医療機関で業務を円滑に行うために必要な研修、派遣先での教育訓練などを課している。

 

日雇い派遣解禁

 

 労働者を30日以内の短期で派遣する「日雇い派遣」は、労働者保護の観点から現在も原則禁止されている。看護師も例外ではない。社会福祉施設や保育園など医療機関ではない施設については看護師の派遣自体は認められてきたが、日雇い派遣は禁止だった。
 しかし新型コロナウイルス感染症の影響などを理由に、看護師不足を解消する選択肢の一つとして4月から例外的に社会福祉施設など医療機関ではない施設に限り、看護師の日雇い派遣を認めたのだ。

 

処遇改善こそ必要だ

 

 現場や専門家からは、「医療の質が低下する」「人手不足の解決にはならない」などの声が上がっている。
 確かに、介護施設などで看護師が不足しているのは事実だ。厚生労働省の調査でも、介護事業所の45%で「不足」の回答となっている。
 看護師不足の理由として、施設に定められたマニュアル通りの食事や入浴の時間や方法に沿って不自由なケア提供を余儀なくされ、仕事に魅力を感じないとの指摘もある。厚労省の調査では介護職場で働く看護師の多くが「看護師としての能力や考えを生かして利用者に寄り添った形でケアをしたい」と望んでいる。また介護施設で働く看護師の年齢は病院より高いため、同世代が少なく孤独感を感じやすいという。今回の解禁で解消される問題ではない。
 これまで介護施設への看護師派遣は、週20時間以上などの労働時間や週の労働日数に関する制限があったが、これが撤廃され、週1日1時間でも働くことが可能となる。しかし、継続したケアができなくなるとの懸念も強い。
 一例をあげれば、介護施設では利用者の薬の管理は重要な仕事だ。高齢者は薬の自己管理が難しいので看護師がサポートする。しかし短時間・非常勤の看護師の出入りが多くなると体調の変化を把握できず薬の量の調整などが困難となる。やはり介護記録の引継ぎだけでは難しい。
 他の職員との連携や、利用者や家族との信頼関係の形成も難しい。派遣当日のドタキャンや連絡がつかない例もある。派遣は雇用責任もあいまいで派遣切りも容易にされかねない。人手不足を解消にするために処遇改善し、離職を減らすことこそが必要だ。

 ちば合同労組ニュース 第131号 2021年6月1日発行より