ドライバー2024年問題/運転従事者の労災過労死1位

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ドライバー2024年問題

運転従事者の労災過労死1位が続く

 8月22日、名古屋で空港連絡バスが高速道路の中央分離帯に接触・横転して炎上、2人が死亡、7人が負傷する事故が起きた。バスは事故現場の数百㍍手前から蛇行し、乗客の証言では「運転手はぐったりして動かず」、死亡した運転手の体調に異変が生じた可能性と報じられている。
 京成バス雇止め撤回を闘う「ちば合同労組」にもコメントを求める取材申し込みがあった。事故原因は今後の調査を待つべきだが、あらためて自動車運転業務の過重労働がクローズアップされた。
 自動車運転業務についてはいわゆる「2024年問題」が迫っている。「働き方改革」関連法によってドライバーの労働時間に上限が設定されることで生じる諸問題という意味で使われている。
 すでに「働き方改革」関連法による「時間外労働時間の上限規制」は大企業では19年4月から、中小企業では20年4月から実施されている。
 時間外労働時間の上限は原則として月45時間、年360時間に制限。労使間で「特別条項」に合意した場合は、年720時間以内、月100時間未満(休日労働を含む)、2~6か月平均で80時間以内(休日労働含む)、月45時間を超える月は6か月まで――となっている。
 しかし建設事業、自動車運転業務、医師、鹿児島県・沖縄県の製糖業に関しては5年間の猶予が設けられ、24年4月からの適用となる。

過重労働が継続

 自動車運転業務については、年間時間外労働時間の上限が960時間(特別条項付36協定を締結した場合)に制限される。これは、他業種のにおける年間残業時間の上限(720時間)と比較して240時間も多く、格段に長時間である。また「月100時間未満」「2~6か月平均80時間以内」「月45時間を超える月は6か月まで」の規制も適用されない。
 他産業と比べると大幅に緩い規制だが、これは運送・物流業界における過酷な時間外労働の実態を反映しているとも言える。
 自動車運転業務に従事する労働者の過重労働は本当に深刻だ。労災認定された過労死の統計で、脳・心臓疾患で労災保険の支給決定件数が最も多い職種が自動車運転従事者、2位を大きく引き離してのダントツ1位である。
 毎月勤労統計調査でも、輸送・郵便業の月間実労働時間は176・2時間で、全産業平均の162・1時間を大きく上回る。
 厚生労働省の審議会である労政審労働条件分科会の専門委員会で「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」を改定する議論が行われている。議論の方向に対し、労働弁護団が緊急声明を出して強い懸念を表明している。
 委員会では、運転業務において①拘束時間の上限を設けること、②休息時間(勤務間インターバル)を11時間とする――などが議論の焦点となっている。
 しかし、委員会では、インターバルについては「勤務終了後継続11時間以上を与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないものとする」とし、努力義務にとどめる方向となっている。
 しかし、脳・心臓疾患の労災認定基準の一つ「勤務時間の不規則性」は「勤務間インターバル11時間未満の勤務の有無」となっている。労災認定の基準内が合法であることは疑問だ。
 拘束時間については、使用者側委員は、1か月320時間の拘束時間を年6回とすることをを求めている。これは125時間の時間外労働を意味する。これも過労死ラインを大幅に超える。
 さらに連続運転時間についても、使用者側委員は「4時間を超えないよう努めることを基本とし、5時間は超えないものとしてはどうか」との意見を出している。

人手不足が深刻化

 ざっくり言って、ドライバーの平均労働時間は他産業より2割長く、残業が2~3倍、1週間の労働時間が60時間を超える労働者が4割超。総じて労働時間が長いのだ。労働時間が長いにもかかわらず、賃金は他産業と比較して1~3割低い。
 当然の結果として、ドライバー不足が深刻である。有効求人倍率は全職業平均の約2倍。人手不足が年々深刻化しし、高齢化も進む。2015年に約76万人だったトラックドライバーは、30年には52万人に減少するとの試算も出ている。約3割の減少だ。
 運転だけではなく、荷物の積み下ろしや荷待ち時間も労働を過酷にしている。
 こうした問題の背景に90年施行の物流2法「貨物自動車運送事業法」「貨物運送取扱事業法」がある。参入規制と運賃規制の規制緩和を行った。「公定運賃」も廃止された。この規制緩和以降、トラック運送事業者数は、1990年に約4万社だったのが、07年には6万社を超えた。
 その後、バブルが崩壊したが、事業者数が急増し、運賃は自由競争となった結果、運賃の低下を生み出し労働条件が大幅に悪化したことは必然であった。
 ドライバーの賃金水準は90年頃から比べると8割程度に下がっている。かつてトラック業界は「きついが稼げる」のイメージがあった。しかし賃金が下がったが過酷さだけは変わっていない。いやむしろひどくなっている。

 ちば合同労組ニュース 第146号 2022年9月1日発行より