介護施設クラスター 過酷な感染対応の業務

医療・介護

職場からの報告

介護施設クラスター

過酷な感染対応の業務

職員不足で入浴もできず

県内で18か所も

 7~8月、新型コロナ第7波で介護施設などのクラスターが急増した。現場は、感染した患者や利用者への対応や感染防止対策に追われ、職員不足が深刻だ。施設への医師派遣もなく、国・自治体の支援も少ない状況だ。
 現在、日本の新規感染者数は世界最多、1日の死者数は連日2~300人が続く。感染者・重症者・死亡者の数いずれも過去最悪のペースだ。
 千葉県では、この記事を書いている8月30日の新聞によれば、昨日(29日)だけで4299人が感染し、10人死亡と発表されている。県内の病院や介護施設、保育園など18か所でクラスターが発生している。前日の新聞でも11人の死亡(28日)で毎日10人前後が死亡している。
 以下は、介護施設でクラスター発生を経験した組合員から聞き取り取材を行い、記事にしたものです。

分会職場で発生

 ちば合同労働組合の分会がある特別養護老人ホームでは7月末にクラスターが発生し、8月後半に収束した。利用者約20人が感染。業務に従事した職員も10人弱が感染した。幸い重症者や死者は出なかった。
 療養と感染制御のために、多床室(4人部屋)の居室変更を行って感染者を集め、濃厚接触者も同じく一つの部屋にまとめて隔離対応した。感染者は一人も入院できず医師の派遣もなく、すべて職員だけで対応した。
 感染者も濃厚接触者も隔離された状態で食事や排泄時以外はずっと横になっている。普段は自分で食事を摂る高齢者も食事介助を受けることに。体力・気力が落ち、回復後も自分で食事をする意思が減退した人もいる。月末の体重測定では感染者は軒並み体重減となった。
 職員は、感染防止のために
ディスポーザブル(使い捨て)手袋を幾重も着け、医療用N95マスクの上に不織布マスクを重ね、ゴーグルやフェイスシールド、防護ガウンを着て業務に従事した。
 途中から予算の都合でガウンがビニール製となり、サウナスーツを着て仕事をしているようだった。部屋の出入りのたびにガウンや手袋、不織布マスクなどをゴミ袋に入れて捨てる。1日3回の食事介助や排泄介助のたびに着脱しなければならず、職員の負担はきわめて大きかった。
 食事や排泄介助のほかにバイタル(体温や血圧、脈拍、血中酸素飽和度)の測定。クラスターが収束するまでの約20日の隔離実施中、感染者の入浴はできなかった。「背中がかゆい」などと苦痛を訴える利用者も。
 利用者も職員も精神的・肉体的に大きく疲弊した。感染した利用者が無気力になったり、ADL(日常生活動作)の低下を実感している。
 新型コロナの感染拡大からすでに2年以上が経過し、以前にクラスターが発生した経験もあり、ある程度の知識やノウハウが確立されていたことは事実だった。ただ個々の職員は不安もあった。

感染で退職者も

 感染した組合員については労災申請も行った。クラスター発生に伴うシフト変更で夜勤が続き、感染者の療養部屋の食事介助などで感染したと思われる。仕事中にノドがイガイガし、胃の下あたりが重くなった。帰宅して熱を測ると39度近く。
 近くの発熱外来を探しても電話もつながらず、自治体に申し込んでPCR検査キットを郵送してもらったが、時間がかかり、結局、施設の抗原検査キットを同僚に玄関先まで届けてもらい、陽性反応が出たため、約10日間の療養生活に入った。
 幸い重症化はせず数日で熱は下がった。しかしエアコンも風呂もない部屋での療養は大変だった。職場復帰の初日から夜勤で、介護職場の人手不足をあらためて実感。新人の職員が感染して、そのまま退職したと聞かされた。

訪問介護の場合

 訪問介護でも利用者や家族が感染する例は多い。訪問介護ヘルパーは、陽性や濃厚接触になった人を訪問するが、人手不足が続く中で疲労やストレスの増加などが深刻な問題となっている。
 家族が感染すれば介護は難しくなる。訪問ヘルパーに頼らざるを得ない。濃厚接触の利用者を訪れるヘルパーは、他の利用者への訪問が難しくなる。人手不足はさらに深刻化している。

 ちば合同労組ニュース 第146号 2022年9月1日発行より