保育労働者 深刻化する人手不足と過酷な労働環境

制度・政策

保育労働者 深刻化する人手不足と過酷な労働環境

一斉退職や組合加入しストライキの事例も

 園児を虐待したとして静岡県で保育士3人逮捕、富山で2人が書類送検など、保育所をめぐる事件や報道が増えている。県内でも松戸市の認可保育所について同様の事件が報じられた。2021年の認可保育園における重大事故(死亡・30日以上の治療)件数は過去最多。
 保育の現場は常に人手が足りず、ギリギリの状態で運営していることが少なくない。「保育園は限界を迎えつつある」との指摘もある。保育士の労働環境の過酷さに関心が高まっている。

深刻な人手不足

 「人手不足が深刻」との声は強い。休憩もとれず、毎日の日誌や記録を書く時間もない。対応が難しい子ども(利用者)について同僚同士でコミニケーションを取る時間もないのが現状だ。
 近年、乳幼児の入所者数が増え、平均の保育時間も長くなっている。国が定めた保育士の配置基準は0歳児が「3対1」。3人の子どもを1人の保育士がみる。
 1歳・2歳児は「6対1」。言葉によるコミュニケーションが難しい1歳児と2歳児では保育士の負担は違う。虐待被害者の多くが1歳児だが、1歳児保育の負担の大きさの背景に国の配置基準があるとも指摘されている。
 人手不足、低賃金と長時間労働が事件の背景にあることは間違いない。保育労働には子どもの成長に寄り添う気持ちの余裕も必要だ。知識や専門性だけの問題ではない。保育の現場では、1人の保育士がワンオペ状態で子どもをみなければならない場面も多い。お漏らしやケンカが同時に起きる。

低賃金で長時間

 全国私立保育園連盟の調査によれば、「1日の通常勤務の中で直接子どもと関わらない時間はどれくらいあるか」との質問に約4割が「0分」と答えた。1人の保育士がみる子どもの人数の多さは、海外から「まるで羊飼いのようだ」との指摘もあるそうだ。
 所定労働時間のほぼすべてを子どもとの直接対応に使わざるを得ず、記録や連絡などの事務仕事は休憩中や時間外に行わざるを得ない。交代要員がいないので年次有給休暇の取得も非常に難しい。
 低賃金も問題だ。保育労働者の賃金水準は介護と同様に全産業平均の4分の3程度。正規職員でも年収約350万円。10年働いても手取り月10万円台も。比較的、若い労働者が多く体感では介護労働者よりも厳しい。

株式会社の参入

 2000年以降、待機児童対策で規制緩和が行われ、株式会社が参入することとなった。委託費を賃金に回さず、他の保育所を建設する費用にしているケースもある。当然、公営保育園の保育士よりも低賃金となる。
 増員を求めても改善されない。おもちゃの購入や備品の修理も行われない。低賃金や残業代の未払い、経験を積む前に休職・退職するケースが多発――こうした状況に対して、この数年、〈保育士の一斉退職〉の話もよく聞く。
 千葉市内でも今年5月に常勤保育士15人が一斉退職したことが千葉日報で報じられた。他方、労働組合をつくってストライキを闘った事例もけっこうある。ちば合同労組も取り組みを強化したい。
 ちば合同労組ニュース 第150号 2023年01月1日発行より