全米で広がるスタバ労働組合

組合活動

全米で広がるスタバ労働組合

24歳の女性バリスタが流れ変える

 米国では労働組合結成の波が続いている。その一つがスターバックスコーヒーでの労働組合だ。昨年末、ニューヨーク州の港湾都市バッファローのスタバ店バリスタ(カフェでコーヒーを淹れる労働者)が初めて労組を結成した。
 これを契機に全米で労組結成が拡大。すでに200を超えるスタバ店舗の労働者が組合認証投票を申請している。この動きはアップルやグーグルなど日本の私たちも良く知る大企業での労組結成に波及している。

モバイル注文

 スターバックスは米国だけで8千店舗、従業員数23万人の巨大コーヒーチェーン。日本には1700店舗。世界80カ国以上に展開して空前の利益を上げている。
 この数年、新型コロナの影響が直撃し、スタバ店舗も感染でバリスタが倒れ店舗が閉鎖となった。だがスタバ資本は、感染対策などを口実にモバイル注文を導入して利益拡大へシフト。だが通勤時間帯に店舗に客が殺到し、接客が追い付かず店舗はパンク状態に陥った。こうしたコロナ禍での労働環境の激変が労組結成の原動力となった。
 社会的にはBLM運動への支持を表明するスタバ資本だが、労組結成への妨害は激しい。組合支持が過半数となることを阻むために、投票が予定される店舗に「サポートマネージャー」と呼ばれる社員を大量に送り込んだ。店舗を閉鎖したり大幅な人員の入れ替えも強行した。組合支持のバリスタのデッチあげ解雇など、困難な攻防が続いている。
 この流れを変えたのが最初の投票勝利だった。
 スタバで初の労組結成となったニューヨーク州エルムウッド店の労組立ち上げの中心メンバーであるブリザックは24歳の女性バリスタ。幼い頃から米国の労働運動指導者ユージン・デブスを尊敬する優秀な大学生だった。
 ユージン・デプスは、19世紀末から第一次世界大戦の頃に、米国初の産業別労組であるアメリカ鉄道組合や世界産業労働組合(IWW)の創設に関わった米国で最も著名な労働運動活動家の1人だ。

組合結成の努力

 彼女は飲み屋やダンスパーティー、性暴力反対の集会などに顔を出し、同じ職場で働くバリスタたちと交流を重ね、水面下で仲間を募った。
 また地域のオルグ(労組専門家)や地域産業労組も協力したことも大きな下支えとなった。現場に影響力のあるベテランの労働者、親しい友人など様々な力がチームワークをつくりあげた。
 エルムウッド店での労組結成の決定打となったのは5日間のストライキだった。1月31日から会社と労働協約交渉し、正当な解雇理由規定、安全衛生規定の改善、賃金と付加給付の改善などを求めている。
 この勝利がネットやSNSなどで広がり、今や一つの大きな運動となって進んでいる。組合結成に勝利した彼女は「エルムウッド店一つに組合をつくれないようで、資本主義をどうやって覆すの?」と口にする。
 一つのコーヒー店の「草の根」の運動が、巨大な米国社会を変えようとしていると言える。

ちば合同労組ニュース 第143号 2022年6月1日発行より