労働委員会とはどのような所か?

実践的に考える職場と労働法 連載・職場と労働法

実践的に考える職場と労働法

労働委員会とはどのような所か?

不当労働行為を禁止し、違反には行政救済制度

 労働組合法は、労働組合の結成やその活動に関する法律ですが、この法律は「労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること」を目的として定め、〝労使対等〟のために次のように規定します。

 「労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護」
 「使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続きを助成する」

 このような目的規定に沿って、労働組合法は、刑事免責や民事免責を規定して労働組合の活動にまつわる法律上の責任を免責し、さらには法人格の付与や不当労働行為救済制度、労働協約の規範的(法的)効力などを規定して、労働組合に対し団体交渉のための積極的な保護を与えているのです。

行政救済の制度

 労働組合法は、不当労働行為として労働組合に対する使用者の一定の行為を禁止し、この禁止の違反について労働委員会による特別の救済手続きを定めています。これを不当労働行為救済制度と言います。
※普段はあまり意識はしないですが、労働委員会によって労働争議の調整手続きや労働争議の制限・禁止を定める労働関係調整法という法律もあります。
 運輸・郵便・水道・電気・ガス・医療などの業種で争議を行うときは十日前の届出義務、内閣総理大臣による緊急調整などの規定があるのです。

 労働委員会は、労働組合のかかわる争議を取り扱う行政機関です。組織としては、各都道府県に設置された都道府県労働委員会と、それを統括する国レベルの中央労働委員会があります。かつては、船員に関して設けられていた船員労働委員会がありましたが08年に廃止されました。
 労働委員会の委員は、公益委員・労働者委員・使用者委員の三者の各同数で構成されます。
 労働委員会の権限は、労働組合法27条に定められた不当労働行為の救済と労働関係調整法の定める労働争議の調整が中心です。
 さらには労働組合の資格審査、労働組合の法人格取得の際の証明、地域単位における労働協約の拡張適用の申し立てなどを行います。
 また2001年の個別労働紛争解決法の制定によって労働委員会でも個別労働紛争の相談や斡旋も行うようになっています。

不当労働行為とは

 不当労働行為は、一言でいえば使用者による反労働組合的行為であり、労働組合法7条1号~4号によって禁止されています。具体的には、①不利益取扱い、②黄犬契約、③団体交渉拒否、④支配介入、⑤経費援助、⑥報復的不利益取扱いの6類型で、主要には「不利益取使い」「団交拒否」「支配介入」の3つが問題になります。
 これらの不当労働行為があったとして労働組合や労働者から救済の申し立てがなされると、労働委員会は、調査を行ったうえ、必要に応じ審問を行って、不当労働行為の成否を判定します。
 審問は、証人尋問が行われるなど裁判と共通性のある手続で進みます。不当労働行為の成立が認められた場合には、労働委員会は救済命令を発し、認められなかった場合には棄却命令を発します。
 申立てができるのは労働組合と労働者個人。被申立人となるのは、労組法7条の「使用者」で、救済命令を履行する公法上の義務を有する者として個人事業主の場合は事業主個人、法人企業の場合は法人となります。必ずしも不当労働行為を現実に行った者とは限りません。

救済命令の内容

 不当労働行為の救済申し立て、行為の日から1年以内。
 救済命令は、基本的に労働委員会の裁量に委ねられていれる点に特徴があります。労使関係の専門家から構成される行政委員会ということで、その専門性によって個々の事案に応じて適切な是正措置を取り得るとされます。
 解雇などの場合における原職復帰およびバックペイ命令、団交応諾命令、ポストノーティス命令(不当労働行為の事実を認めるとともに、今後そうした行為を行わない旨を述べた文書を事業所内等に掲示させるもの)などが典型的な救済命令です。
 救済申立ては二審制となっており、初審となる都道府県労働委員会の命令に不服のある当事者は、中央労働委員会に再審査の申し立てをすることができ、再審査命令に不服がある場合には、裁判所に命令の取消訴訟(行政訴訟)を提起することもできます。

ちば合同労組ニュース 第98号 2018年09月1日発行より