労働組合の結成、組織と運用

連載・職場と労働法

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 労働組合の結成、組織と運用

直ちに地域合同労組に加入すればユシ協定に基づく解雇はできない

ユニオンショップ

 労働組合の組織拡大の手段として、組合員であることを雇用の条件とすることで組合加入を強制する協約上の制度をユニオンショップと呼びます。日本では、労働協約を有する労働組合の過半数がユニオンショップ協定(ユシ協定)を結んでいます。大企業になるほどその割合はより高くなります。
 しかし実際には「従業員は組合員であること」のみを定めて解雇規定のないユシ協定も多く、ユシ協定締結組合からの脱退を求める裁判で最高裁は「脱退の自由という重要な権利を奪うもので公序良俗に反して無効」との判断を示した(東芝訴訟/07年2月)。
 大企業の社員で地域合同労組に加入する場合に、ユシ協定の存在が問題になることがありますが、他の労働組合に加入したり、あるいは新規に労働組合を結成した場合、これを解雇することは「民法第90条により無効であり、解雇は解雇権の濫用」とする最高裁判決もあります(日本食塩事件)。
 つまりユシ協定締結組合から脱退または除名された場合も、すみやかに別の組合に加入するか、新たな組合を結成した者についてはユシ協定による解雇はできません。
 労働組合法には、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合には、ユシ協定の締結を妨げないとの但書があります。解釈は諸説ありますが、ユシ協定の要件として過半数代表組合であることを明らかにした規定と解するのが通説のようです。
 ユシ協定締結組合による除名が不当・無効とされた場合、解雇が無効となるかどうかは論争がありましたが、上述の日本食塩事件において最高裁は、無効な除名をなされた者に対するユシ解雇は客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当なものとして是認することができない、として無効の判断を示しました。

労働組合の機関

 労働組合には基本的な機関として、

①意思決定を行う機関
②業務執行を行う機関
③組合を対外的に代表する機関
④組合の会計その他の業務執行を監査する機関
⑤執行機関を補助して日常的な事務処理を行う機関
⑥特別の任務を遂行するための機関

 ――などがあります。

 ①意思決定機関は、最高意思決定機関である総会や代議員会、中央委員会など。②業務執行機関は、組合3役(委員長・副委員長・書記長)とその他の執行委員から構成される執行委員会です。③代表機関は委員長であることが一般的です。
④監査機関には、監査委員や監事などの役員があてられます。⑤諸機関として書記局・組織部・財政部・法対部・教宣部などが置かれます。⑥特別機関は、選挙管理委員会・査問委員会・闘争委員会などがあります。
 これとは別の次元の機関として、下部組織である地方本部・支部・分会などが置かれることがあります。下部組織はその内部において意思決定機関や執行機関を置きます。

労働組合に対する使用者の便宜供与

◎在籍専従

 労働組合の役員が従業員としての地位を保持したまま組合業務に専従することを「在籍専従」と言います。大企業労組で多いですが、在籍専従は使用者の承諾があって初めて成立し、その承諾を与えるかどうかは使用者の自由となっています。

◎チェックオフ

 労使協定に基づき使用者が組合員である労働者の賃金から組合費を控除して組合に引き渡すことをチェックオフといいます。日本の労働組合の約9割がチェックオフを行っています。
 チェックオフが賃金全額払いの原則に抵触すると判断されることはほぼありませんが、個々の組合員が中止を求めた場合、使用者は中止する必要があります。もっとも組合規約等で組合費の支払いをチェックオフで行うなどの規定がある場合は判断が難しい問題となります。

◎組合休暇

 労働協約で組合業務のための休暇、勤務時間中の組合業務従事が制度化されることがあります。

◎組合事務所

 日本の労働組合の約65%は使用者から組合事務所の供与を受けています。労働組合法も、最小限の広さの事務所の供与は、経理上の援助のあたらず、かつ不当労働行為にも該当しないと規定しています。
 組合事務所の明け渡し請求がしばしば問題になりますが、その多くは不当労働行為(支配介入)に該当するかどうが問題になります。

 ちば合同労組ニュース 第123号 2020年10月1日発行よ