厚生労働省の統計不正問題

制度・政策

アベノミクス成果を偽装し発覚

厚生労働省の統計不正問題

 厚生労働省の不正統計が世間を騒がせています。
 毎月勤労統計は、厚生労働省が毎月公表する雇用や賃金、労働時間などに関する労働統計です。景気分析や政策決定の指針となり、労働保険の給付金などの算定に用いられます。
 今年1月に入って根本厚労相が不正を認め、雇用保険などで過少給付が約2千万人、約567億円に上ることが明らかになり、一気に社会問題化しました。
 統計不正が発覚するきっかけとなったのが実は昨年9月の自民党総裁選です。安倍の出馬表明の直前に、毎月勤労統計調査の名目賃金の伸び率が3・6%増だと発表。各紙が「21年ぶりの記録的な賃金上昇」「アベノミクスの成果」などと報じました。
 だが実際には昨年の実質賃金の伸び率はマイナスだったのです。厚労省が算出方法を変更し、高めに出るように数字を操作していたのです。
 これを、昨年9月12日付西日本新聞が、統計の作成方法が見直され、賃金の増加率が実勢よりも高くなっているのではないかと指摘、「安倍政権の狙い通りに賃金上昇率が高まった形」になっていると疑義を投げかけたのです。
補正せず上昇を偽装
 毎月勤労統計調査は、調査対象事業所のうち30人以上の事業所について2~3年ごとに無作為抽出した事業所に総入れ替えていましたが、18年1月分の調査から約半数を入れ替える方式に変更。
 その際、賃金が低い中小企業を減らして、相対的に賃金の高い企業に入れ替えて、あたかも賃金が上昇しているかの結果になったのです。
 本来は、統計のベースとなる取得データを変更した場合には、変更に合わせて過去の統計を修正・改訂しなければなりません。
 ところが厚労省は、それをあえて補正せず、算出方法が異なる18年度と17年度の数字をそのまま比較して賃金伸び率を公表したのです。結果、3・6%増という驚異的な数字が捏造されたのです。
 麻生財務相が「サンプル入れ替えの際に過去に遡って下方に補正されるのはけしからん」とイチャモンをつけたことがきっかけでデータ捏造が始まったのではないかとの指摘もあります。
小泉時代からの不正
 そもそもの不正が始まったのは04年から(不正を容認するマニュアルは03年に作成)のようです。小泉政権の「聖域なき構造改革」で失業と非正規化が劇的に進行し、雇用保険の給付を抑制したかったのが不正のきっかけではないかとも言われています。
 統計の基礎データのうち04年から11年分が紛失、または破棄されたいたことが判明しています。さらに雇用者報酬・繊維流通統計調査・貴金属流通統計調査・建築着工統計調査・消費動向指数など政府の基幹統計の半数で不正やミスが続々と公表されています。
 神戸製鋼や日産自動車、スバルやKYBなど大企業でのデータ偽造と隠蔽が大問題となっているが、まさしく国家ぐるみで行われている。
 この問題、根が深く簡単に論点が絞れません。厚労省に限っても働き方改革関連法案をめぐる裁量労働制データ偽装、年金の68歳引き上げと雇用保険の年齢制限の撤廃(従来は65歳まで)などと密接な問題なのです。(S)

ちば合同労組ニュース 第103号 2019年02月1日発行より