拡大する英ゼネスト/看護協会が初のストライキ

医療・介護

年末年始に拡大する英ゼネスト

王立看護協会が初のストライキ

空前の看護師スト

 英国では年末から新年にかけて過去30年で最大規模の歴史的なストライキが闘われている。鉄道・バス・空港・郵便・教員・高速道路・出入国管理職員など公的サービスを担うあらゆる労働組合のストライキがクリスマスから年末に連鎖的に行われた。
 とりわけ世界に大きなインパクトを与えたのが国営医療の国民保健サービス(NHS)で働く看護師のストライキ。
 12月15日、王立看護協会は約10万人が参加する過去大規模のストライキを実施した。組合創設から106年の歴史で初めて看護師たちがストに入った。ストは1日だけで1万6000件の手術の延期や予約の変更など大きな影響が及んだ。

実質賃金2割減

 「暖房か食事かを選ぶ生活」「給料と家賃の金額が同じ」「私たちは生計を立てるために今すぐ昇給が必要です」――ストのピケットラインに立った看護師たちはこう訴えた。
 NHSで働く看護師の状況は実に劣悪だ。10年前に比べて実質賃金が20%も低下。生活苦からフードバンクを利用せざるをえない、暖房をつけられずに職場に寝泊まりするなど、深刻だ。
 多くの看護師、特に新人看護師が低い給料とコロナで業務が多忙を極めるなか離職者は増え続け、昨年だけで2万5千人の看護スタッフが離職した。その結果、現場では欠員が埋まらず、現場では過重労働が常態化している。このことがNHSの医療サービスの低下と患者の安全に影響を与え、医療体制は崩壊寸前にまで来ている。
 今年7月にイギリスでは物価対策として賃金は4%上がったが、他方でインフレ率は11%に及び、燃料費の2~3倍の高騰がこれに追い打ちをかけている。これでは生活できないと、組合は19%の賃上げを要求した。
 しかし、コロナ禍の中で「医療従事者に感謝の拍手を」などと言っていたはずの英国の政府閣僚たちは、看護師の労働組合と交渉することさえ拒否している。

連帯ストの連鎖

 このストに続き、救急隊員も「給料とNHSを守るための闘い」のストライキに立ち、さらに、病院関連や清掃労働者も続いている。
 政府は、約1200人の陸海空軍の軍人を「スト破り」のために動員し、ストライキを闘う看護師たちに歩み寄る姿勢は全く示していない。
 英国では、さらに年始に向かって労働者の生きるためのストが準備されている。1月にも大規模な看護師ストが計画されている。いま英社会では「ストライキ・カレンダー」が作成され、ストが実施される産別と日程が発表され、多数の職場でストが準備されている。労働者のストは社会すべてを止めるところにまで発展しようとしている。
 ウクライナ戦争は長期化し、インフレ・物価高は収まる様相はない。2023年は、英国―欧州をはじめ、全世界でストライキが大発展する歴史的年になるだろう。

 ちば合同労組ニュース 第150号 2023年01月1日発行より