新型コロナウイルス関連の労働問題/実践的に考える職場と労働法

連載・職場と労働法

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新型コロナウイルス関連の労働問題

コロナ理由の一方的な雇い止めや内定取り消し×

 先月に引き続き、新型コロナウイルス関連の労働問題について検討します。

 原則として、使用者の判断で休業する場合は、「使用者の責めに帰すべき事由による」休業となります。
 したがって労働基準法の規定により休業手当が請求できます。ですので感染予防や「仕事がない」などの理由であっても使用者から自宅待機などを命じられた場合は休業手当を請求できるはずです。
 「37度5分以上の発熱があれば出社しないで」などの会社側の措置で休ませる場合は休業手当の支払いは必要になります。
 使用者の判断で休業するか否かがポイントになります。この間の組合への労働相談でも、海外旅行から帰国者や花粉症の症状がある労働者が出勤を拒否されるケースがありました。感染者や濃厚接触者に該当しない限り、使用者の判断での休業に該当するのであれば当然に休業手当の支給が必要です。家族が感染し、本人は感染しておらず仕事ができる場合でも、使用者の指示による休業であれば休業手当は請求できるはずです。
 いずれにせよ労働組合として明確な判断基準を会社に示させることなどが重要になってきます。
 「すべてコロナウイルスのせい。不可抗力なので休業手当を支払う義務はない」との主張は通用しません。確かに法律上、不可抗力の場合は手当の支払いは義務ではないですが、単に「コロナのせい」というだけでは不可抗力による休業とは言えません。

雇用調整助成金

 厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症について雇用調整助成金の要件を緩和し、使用者が支払った休業手当の一部の助成を行っています。雇用調整助成金について特例が拡大し、対象企業や助成対象者は拡大しています。
 例えば、6か月未満の雇用保険被保険者も対象になります。あるいは厚生労働大臣が指定する緊急特定地域(この原稿執筆時点では北海道のみ)では、週の所定労働時間が20時間に満たないアルバイトやパート労働者も対象となります。
 使用者が特例や対象者の拡大を把握していないだけの可能性もあるので、「うちは対象外で助成は受けられない」と言われても、もう一度、内容の確認などをしっかりさせることは重要です。
 厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」として雇用調整助成金とは別に新たな助成金制度を創設しました。
 当面2月27日から3月31日までの間に、休校による子どもの世話や感染の疑いがある症状の子どもの世話のために保護者が休む時に、労働基準法上の年次有給休暇とは別に賃金全額支給の休暇を取得させた事業主に、日額8330円を上限としてその全額を助成する制度です。
 自営業やフリーランスについても日額4100円(定額)の支給制度が創設されました。
 祖父母が孫の面倒をみるために職場を休んだ場合も対象になる。また国籍を問わず適用されます。

非正規雇用の問題

 コロナ労働相談では、やはり非正規雇用の問題が浮き彫りになっています。正社員はテレワークで、契約社員は出勤というケースもありました。あるいはパートには(コロナ関連の)有給休暇の使用は認めないというケースもありました。
 契約更新を繰り返した有期雇用契約については単に期間満了を理由とした雇い止めは労働契約法で禁止されていますが、年度末を前にコロナ不況を理由とした雇い止めが懸念されます。
 有期雇用契約であっても「解雇権濫用法理」が適用されます。コロナの影響で経営が悪化したなどを理由とする場合も整理解雇4要件などが適用されます。
 非正規雇用の場合、更新の問題があって年次有給休暇の取得や休業手当などの諸権利の行使が難しい事情もあります。労働組合として取り組みが必要です。
 内定取り消しも報道されています。内定は基本的に雇用契約が成立しています。使用者から一方的に取り消しはできない。法律上も、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない内定取り消しは無効です。

今こそ職場に団結

 非正規雇用や医療・介護職場などで、「体調が悪くても出勤せざるを得ない」との声をよく聞きます。
 時給や日給で働く非正規労働者は、出勤できなければ生活への打撃が大きい。また要員不足が深刻な医療・介護職場も無理して出勤するケースをよく聞きます。診断書が必要とされハードルが高い事例もあります。
 労働者が安心して休める要員や賃金補償の確保を会社に要求すると共に、そうしたことを通して職場の団結と連帯感をつくりだしくことも重要ではないかと思います。

ちば合同労組ニュース 第117号 2020年04月1日発行より