ファクトリーウーマン

労働映画

映画紹介『ファクトリーウーマン』

フォード工場で男女同一賃金を要求した無期限ストの実話。

レンタルの無料クーポン券でなにげに見た映画が当たりでした。スカッとした気分になります。労働運動の意欲がわく映画です。お薦めです。1960年代のイギリスを舞台に男女同一賃金制を訴えて闘ったフォード自動車の女性工員たちの実話を映画化したものです。

ストーリーはこんな感じ。1968年、英国ロンドン東部の町ダゲナムにあるフォード自動車の巨大工場。約5千人の男性工員と187人の女性工員が働く。彼女たちはシート縫製を行う熟練ミシン工です。
工場では下着姿でのミシン仕事。たまに用事で男性が目を覆いながら入ってくると女性たちの冷やかしの言葉。いっけん明るく楽しい職場の雰囲気ですが、実は換気が悪くてシャツなど着ていられないほど蒸し暑く、雨が降れば雨漏りというひどい環境での労働なのです。

フォード社はけっして女性を技術労働者として認めません。「女だから」という理由で賃金は半分以下。残業代も払わない。ついに男女同一賃金を求めてストライキ決行となります。しかし会社はまったく取り合わない。なぜなら、これを認めれば世界中のフォード工場の女性労働者の賃金が倍になるからです。
最初はストライキといっても門前でプラカードを掲げただけで、お茶を飲んで時間をつぶし、雨が降れば家に帰っちゃうという感じです。フォード社もすぐにあきらめて職場に復帰するだろうと甘く考えています。

リーダーに選ばれたリタは団体交渉の場で、自分たちに協力してくれると思っていた組合幹部が実はお茶を濁して収束させようとしていることを知ります。会社だけが相手ではないことを肌で感じ、無期限ストを決意するリタ。
ストの長期化で座席シートの生産が滞り他のラインもストップ。最初は応援していた男性労働者の仕事もなくなり自宅待機に。怒りの矛先が彼女たちに向けられていきます。同じ工場で働くリタの夫とも気持ちがすれ違って……というストーリー。

主人公のリタを演じたサリー・ホーキンスが素晴らしい。すごく普通な感じ、というよりむしろ気弱な感じの女性です。夫に遠慮している感じや勇気を振り絞って演説したり、会社に対して啖呵を切る場面など、人間の弱さと強さ、信念と葛藤のせめぎ合いに引き込まれました。映画全体はコミカルな雰囲気なのですが主人公はそういうタイプではないのがまた映画の奥行きを感じさせます。映画の主人公として興味深いキャラクターです。でも、なかなか共感しました。

「組合幹部を信用するな」と最後まで彼女たちを叱咤激励したアルバートという主任のオジサンも良い感じ。組合幹部から脅されても考えを変えません。「幼い頃、母親が働きに行って、懸命に仕事をしてもわずかな給料しかもらえず苦労してきた姿を見てきた」とリタに語るシーンがあります。
フォードの英国支社長の妻や労働大臣などのキャラクターもまあ悪くない感じです。
この映画、DVD化されていません。ネット上のレンタルか購入のみですが、機会があれば観て下さい。(S)