マイレージ、マイライフ

労働映画

映画紹介『マイレージ、マイライフ』

 変に印象に残った映画。ジョージ・クルーニー演ずるライアンの仕事は、会社に代わって労働者に解雇を通告し、事件や訴訟を防止するために説得すること。米国では解雇通告もアウトソーシングされているのだ。
ライアンは全米を飛び回り、1年のうち300日以上を出張で過ごす。「バックパックに入りきらない人生の持ち物は背負わない」がモットーで親や親戚ともドライな付き合い、結婚にも興味を持たない。旅先で知り合ったアレックスとも気楽な関係。目標はマイレージ1000万マイルの達成。
ある日、ライアンが本社に戻ると、新入社員ナタリーがネット上での解雇通告を提案し、「面談のための出張など無駄」と主張する。「現場のことが分かっていない」と反論するライアン。なかなか皮肉が効いたストーリーです。
そこで上司は、ライアンにナタリーの教育係を命じ、彼女に実際に解雇宣告を経験させる。ナタリーは、解雇通告で初めて目にしたさまざまな人生に衝撃を受ける。
「30年も会社に貢献してきたのに見ず知らずのお前に解雇されるのか?」「妻に失業したなんて言えない。どうすりゃいいんだ」「失業のストレスは、家族の死のストレスと同様と聞いたが間違いだ。自らの死と同じだ」
他方で、ライアンの方も、結婚をためらう妹の婚約者の説得などの事件を通じて気持ちに変化が生まれる。紆余曲折、ついに1000万マイルを達成し、会社に戻ると解雇された女性のひとりが自殺したとの一報が……
米国ではこんな映画が成り立つのだ。安倍政権が目指す解雇自由の社会とは、と考えた。

ちば合同労組ニュース 第70号(2016年5月1日発行)より