信さん・炭坑町のセレナーデ

労働映画

映画『信さん・炭坑町のセレナーデ』

『信さん・炭坑町のセレナーデ』という映画を観た。福岡の炭坑町が舞台で昭和38年(1963年)から8年間を描く。『フラガール』九州版といった感じでもあるが、ちょっと辛口な映画だ。

主人公はマモルという東京から福岡の炭坑町にやってきた小学生。母の故郷に2人で戻ってきた。襟付きの服を着て坊主頭でないマモルはいかにも東京の子で学校で浮く。そんなマモルがいじめられているのを信さんが助けてくれる。
信さんは早くに両親をなくし、炭坑で働く叔父夫婦に引き取られ、いつも疎まれ厄介者の扱いを受けていた。そんな信さんにやさしく接するマモルの母・美智代。この事件をきっかけに信さんはマモルの母に恋をする。

信さんの淡い恋や在日朝鮮人のリー・ヨンナムとの友情、信さんの妹・美代……しかし炭坑では指名解雇をきっかけに住民の対立が始まっていた。労働者の闘いを暴力団や警察が押しつぶす。これは三井三池争議がモデルで実際に跡地でロケもしている。映画ではスト破りにヨンナムの父親の姿があり、労働者たちがショックを受けるシーンもある。

『フラガール』はハワイアンセンターの成功物語に仕上げられていたが、この映画はちょっと違う感じだ。友情や家族愛の描き方もテンションが違う。ハワイアンセンターもできないし、炭塵爆発事故で信さんは死ぬ。最後はマモル母子も就職を機に炭坑町を離れる。寂しさが漂う映画ではある。
しかし炭坑町の人びとに対する眼差しは、『フラガール』よりも共感した。原作もあるので一度読んでみようか。(S)

ちば合同労組ニュース 第61号 (2015年8月1日発行)より