いつでも夢を

労働映画

映画紹介『いつでも夢を』

 高度経済成長が始まった頃の東京下町の工業地帯を舞台にした青春物語。勝利(浜田光夫)は、仕事に失敗し父親が家出し、中学を出てすぐ森田製作所に就職、夜は定時制高校に通う。看護師ひかる(吉永小百合)は、幼い頃に両親をなくし、兄も病気で失い貧乏医院の三原医師の養女となって昼は看護師、夜は定時制。留次(橋幸夫)は、森田製作所の資材を運送する日の出貨物の新米運転手だ。
 勝利は、貧しい職工暮らしを抜け出て一流会社に入って背広とネクタイで仕事をするのが夢だ。級友の秋子(松原智恵子)は「今の暮らしにも夢はある」と反論する。
 留次は同僚のケガで三原医院を訪ね、貧しい人から金を取らずに治療する姿に感動。勝利は一流企業である東洋物産の入社試験を受ける。試験後、勝利はひかるをデートに誘う。ところが留次の母親が上京し、東京見物に付き合わされる。家に帰ると不採用通知が…。社会に早くに出た定時制の高校生は世間ずれしているからダメというのだ。

 勝利はふてくされ「学校は辞める。一生工員なら学問は不要だ」と言い出す。留次は勝利と殴り合いに。そこに弟が駆けつけ父親が事故で入院したとの知らせ。父親の家出を許せなかった勝利だが、皆から励まされ、父親の分まで働き学校へも通う決心をする。
 荒川土手や西新井橋、4本のお化け煙突(千住火力発電所)が何度も登場する。フライス盤や溶接など金属加工工場で働くシーンも当時の雰囲気を伝える。アイドル映画だが、なかなか社会派の映画だ。主題歌「いつでも夢を」は、前年に橋と吉永のデュエットで大ヒットした。

ちば合同労組ニュース 第137号 2021年12月1日発行より