おくりびと

労働映画

映画紹介『おくりびと』

 08年、本木雅弘主演の映画。納棺師は故人を棺に納めるために必要な準備を行う仕事。遺体を湯で拭い清めメイクを施す。遺体に衣装を着付け、旅立ちの身支度を整える。遺体は硬直し、簡単な仕事ではない。一連の所作の美しさが映画の世界観をつくる。孤独死や交通事故で腐敗・損壊する場合もある。できるだけ生前に近い姿に復元し遺族が最後のお別れができる状態にして引き渡す。そんな納棺師の仕事を描く。

 東京の管弦楽団に職を得た主人公の小林大悟。しかし楽団が解散となり夢を断念して妻と共に故郷へ戻ることに。「旅のお手伝い」「高給保障」「実労時間わずか」の求人広告をみつける。実は「旅立ちのお手伝い」で納棺の仕事と知って困惑するが社長に押し切られて就職することに。妻には「冠婚葬祭関係」としか言えず結婚式場に就職と勘違いされる。 

 最初の現場は孤独死で2週間経過した高齢女性の腐乱屍体の処理。小林は仕事の厳しさを知る。だが少しずつ納棺師の仕事に慣れ人生の最後に関わる職業の面白さを感じ始める。しかし同級生からは「もっとましな仕事に就け」、妻から「そんな汚らわしい仕事は辞めて」と懇願される…

 自分はお仕事映画として観たが、死生観や親子の問題など諸テーマが織り込まれ、なかなか奥深い。自分の気持ちに似た石を探して相手に渡す〝石文〟が大切な伏線になっている。

 葬儀関連の職業はクローズアップされることは少ない。だが葬儀市場は巨大だ。「玉姫殿」で知られる業界最大手ベルコは全従業員7千人余のうち正社員は32人。残りは個人請負。労働組合を結成した労働者を解雇して話題となった。

ちば合同労組ニュース 第118号 2020年05月1日発行より