ピータールー/マンチェスターの悲劇

労働映画

映画紹介『ピータールー/マンチェスターの悲劇』

 1819年8月16日に英マンチェスターのピーターズ広場で起きた民衆虐殺事件を描く。英国史上もっとも残忍かつ悪名高い事件を言われる事件だ。

 ナポレオン戦争後、不景気と失業に人びとは苦しむ。さらに穀物法による小麦の輸入禁止が追い打ちをかける。賃金は3分の1、パンの値段は5倍に。変革を求める織物工場の織工たちは選挙権とマンチェスター代表の選出などを求めて大衆集会を計画する。
 彼らはロンドンで著名な演説家だったヘンリー・ハントを招請。だが、その動きはスパイや手紙の検閲で政府に把握されていたのだ。集会は、慎重に計画され、着飾った女性や子どもも参加する非武装で平和的なものだった。マンチェスター周辺住民の半数近く、約6万人が集まる大衆集会に。

 だが集会開始後、地元の治安判事は、ハントの逮捕状を発し、騎兵隊がサーベルを抜いて群衆に突撃する。こうして十数人が死亡し、数百人が負傷する虐殺事件となった。
 新聞記者が居合わせた最初の公衆集会とも言われ、「ピータールーの虐殺」として報じられ英国中で憤りの声があがった。ガーディアン紙の創刊のきっかけにもなった。
 事件から200年ということで作られた映画だが、現代世界の諸問題に驚くほど通ずる。いや現代が急速に当時の世相に近づいているのか。香港デモや韓国のロウソクデモ、フランスの黄色ベスト運動……このタイミングで再現されたのは意義深い。

 貧困や不公正に怒る織工たちが集会に向かっていく様子に共感を覚えつつ、最後の悲劇のシーンは暗く重い気分に。

ちば合同労組ニュース 第116号 2020年03月1日発行より