ブレッド&ローズ

労働映画

映画紹介『ブレッド&ローズ』

ケン・ローチ監督。ビル清掃労働者の組織化を描く。タイトルは移民労働者が掲げたスローガンに由来。パンは最低限の生活、バラは豊かに生きるための尊厳を意味する。
主人公のマヤはメキシコ出身の労働者。ロサンゼルスに住む姉を頼りに国境を越えて米国に不法入国した。姉の紹介でオフィス街のビルで清掃員の仕事に就く。そこでは中南米諸国やロシアからきた移民労働者が働いていた。
マヤはある日、ビルに潜入した組合オルグのサムを助ける。サムは、彼女たちの賃金が20年前より低く、健康保険もないと指摘し、労働組合に誘う。興味を持ったマヤは職場の仲間と一緒に話を聞く。サムは、労働者たちの賃金がピンハネされていること、労働者の権利などを教えた。これを知った管理者が「次は解雇する」と脅迫、組織者が誰かを答えない女性労働者をクビにする。マヤは強い衝撃を受ける。会社の卑劣な分断を超えて労働者たちはしだいに団結していく……。
映画のモデルとなっているSEIU(サービス従業員国際組合)は、医療・介護、公務員、ビル清掃などを組織する全米最大の労組。「ジャニター(ビル清掃員)に正義を」キャンペーンは、業務委託に対応した組織化の戦略。ビル所有会社・管理会社は、ジャニターの直接雇用からビル清掃請負会社へ業務委託するようになったのだが、SEIUは委託元を真の雇用主として圧力をかけ組織化した。
SEIUは、労働運動の新潮流の代表格として有名だが、他方で「ストはやらない。交渉は本部役員」という古いビジネスユニオニズムの体質も。巨大労組で一筋縄ではいかない。しかし映画は参考になる。

ちば合同労組ニュース 第74号(2016年9月1日発行)より