映画紹介『ベトナムの風に吹かれて』

労働映画

映画紹介『ベトナムの風に吹かれて』

 松坂慶子主演の日本とベトナムの合作映画(2015年)。ベトナムで働く日本語教師が80歳を過ぎた認知症の母親と共にベトナムでの生活を綴ったエッセイ『ベトナムの風にふかれて』が原作。実話とのこと。
 ベトナムの首都ハノイで日本語教師として働く佐生みさお(松坂慶子)のもとに父の訃報が届く。故郷の新潟で目の当たりにしたのは認知症のため夫の死さえ理解していない母(草村礼子)の姿。後妻の母の血縁者は自分1人。みさおは義兄ら親族の反対を押し切りベトナムに母を連れて行く。
 海外どころか新潟から出たこともない母との久しぶりの2人暮らし。慣れない土地で徘徊など母が巻き起こす様々なハプニングも、言葉は通じずともベトナムの人びとは暖かく受け容れ、次第に母の症状は改善していく。
 しかし思いがけない事故で母は車イス生活となり症状も進行、厳しい介護生活に直面する。周囲の助けもあって最後は母をベトナムに連れてきて良かったとあらためて感じるようになるという映画。

 ベトナムの東南アジア的な雰囲気と松坂慶子の飄々(ひょうひょう)とした演技のためか、重くなりがちなテーマだが終始おおらかな感じの映画。戦時中の旧日本軍とベトナムの関係、学生時代にベトナム反戦を共に闘った友人(奥田英二)との再会とロマンスなど、サイドストーリーも盛り沢山だ。11月に亡くなった大森一樹監督の縁なのか吉川晃司が本人役で友情出演も。
 「介護」のテーマでベトナムを舞台に映画化したのが面白い。草村礼子の「戦争は嫌い、絶対ダメ」の台詞も印象に残った。

 ちば合同労組ニュース 第150号 2023年01月1日発行より