映画紹介『事件記者』

労働映画


 NHKのテレビドラマ(1958年~66年)の映画化第1弾。警視庁詰めの新聞記者が所属する「警視庁桜田クラブ」を舞台に特ダネを狙う事件記者を描く。「事件記者」の単語はこのテレビドラマで定着したらしい。
 警視庁の記者クラブには各社から腕利きの記者が派遣されている。映画は2人の新人記者の配属シーンから始まる。その日、品川駅で新宿のヤクザの親分が撃たれる。新宿と六本木の縄張り争いか!? だが重傷を負った親分は警察にも真相を語らない。警察や記者が必死に関係筋を当たる。カギは現場から消えた親分のカバンだった…。
 その晩、親分は騒ぎに乗じて病院を抜け出す。復讐の抗争が始まることを予想して、ヤクザの事務所周辺に記者が張り込み、警察も警戒を強める。そして翌日、チンピラの射殺体が発見される。殺されたチンピラの写真を見て東京日報の記者が驚く。前日、喫茶店ですれ違った時、カバンを預けていたことを思い出したのだ。
 実はヤクザの縄張り争いではなく、カバンが目的だったのではないかと記者は考える。果たして2つの弾丸は同じものだった。特ダネだ。その夜、親分を撃ち、チンピラを射殺した流れ者のヤクザと殺し屋の2人組は警察に捕まり、抗争寸前だった新宿と六本木の両ヤクザ組織も一網打尽で検挙される。
 「ヤクザの縄張り争いの影に麻薬の秘密!」――翌朝の東京日報は見事に他社を出し抜く特ダネ。
 わずか54分の短い映画。事件記者のイメージはたぶんこのドラマと映画の影響なのだと思わせる内容だった。