映画紹介『定められし運命』

労働映画

映画紹介『定められし運命』

 2012年のフランス映画。時代は第2次世界大戦。ナチスドイツに占領されたアルザス出身の17歳の少女アリスとリゼットは家族から引き離され労働奉仕施設での軍事訓練後に弾薬製造工場で働くことに。
 アリスは聡明で気が強くドイツ人に屈しない。他方、リゼットは従順な態度で親衛隊の上司からも評価される。アリスはそんなリゼットが大嫌いだった。しかし、脱走に失敗したアリスをリゼットがかばい、やがて親友に。
 アルザス・ロレーヌ地方は、長年、フランス・ドイツ間の領土争奪の舞台となり、17世紀後半から独領時代が3回、仏領が3回と両国を行き来。その度に学校の教育言語が変わり、当該国の兵役義務が課せられた。

 中学の国語教科書で『最後の授業』という短編小説を読んだ記憶が。「フランス語で授業するのはこれが最後。(普仏)戦争で負けたためドイツ語しか教えてはいけないことに…」
 当時はまったく疑問に思わなかったが、実はアルザス地方は独語系の地域で、この小説はフランス側から描いたものなのだ。指摘を受け1986年に教科書から消えた。
 映画は、ドイツ社会の中でアルザス人は信用されず少女たちも軍需工場の爆発事故で妨害行為の嫌疑が。その後、別の施設に移され看護師として働くことに。
 しかし施設は、「純潔」なドイツ人を増やすため軍幹部らの子どもを妊娠させられた女性が出産するための場所(レーベンスボルン)だった。ブロンドヘアーと青い瞳のリゼットが「アーリア人」の条件に合うと対象として選ばれたのだ…
 様々なテーマを折り込み複雑な映画。

 ちば合同労組ニュース 第148号 2022年11月1日発行より