映画紹介『怒りの葡萄』

労働映画

映画紹介『怒りの葡萄』

 スタインベックの小説を映画化。舞台は世界大恐慌後の30年代末の米国。大規模な資本集約型農業が拡大し、米中西部で深刻化したダストボウル(開墾で発生した砂嵐)で耕作が不可能となり流民化する農民が続出、社会問題となっていた。本作は、さらなる機械化を進める資本家と土地を追われカリフォルニアに移っていった貧農たちとの闘争を材料に故郷オクラホマ州を追われたジョード一家を描く。
 トム・ジョード(ヘンリー・フォンダ)は刑務所から仮釈放で実家に戻る。家族が営む農場はダストボウルで耕作不能となり土地を奪われる。生活に窮した家族は家財道具を叩き売って購入した中古トラックでカリフォルニア州に向かう。
 過酷な環境に耐えられず旅の途中で祖父母が死ぬなど苦難の末、一家はカリフォルニアに辿り着く。しかし、同じように土地を失った多数の農民が流れ着き失業者があふれていた。ジョード一家の希望は打ち砕かれる。
 移住者たちは蔑まれながら貧民キャンプを転々とし、地主の言い値の低賃金で日雇い労働するほかなかった。賃金をピンハネするブローカーと労働者の争いで仲間のケーシーがストライキの首謀者として地主が雇った警備員に殺される。
 トムはその警備員を殺して追われる身に。迷惑が及ぶのを恐れ、トムは家族のもとを1人立ち去る。暗闇の中にトムを見送る母…。翌朝ジョード一家は新たな旅路へ。
 映画終盤の一連の会話が珠玉。「金持ちは子どもが身代をつぶせばそれで終わり。だけど、あたしたちはそうじゃない。たくましく生き続ける。永遠に生きる。それが民衆なんだよ」

 ちば合同労組ニュース 第152号 2023年03月1日発行より