恋のしずく

労働映画

映画紹介『恋のしずく』

 日本三大銘醸地の1つとして知られる広島県東広島市・西条が舞台の日本酒造りを物語にした映画。

東京の農業大学で醸造学を学びワインソムリエを目指す大学生が、フランス留学に必要な単位をとるために西条の老舗酒造で嫌々ながらも研修を受けることに。病に伏す蔵元と父親に反発する息子、厳格な杜氏や職人のもとで実習を開始するが慣れない作業に失敗ばかり……。主人公の大学生を川栄李奈、蔵元を大杉連が演ずる。
 映画は日本酒造りの職人の仕事を描く。酒造りの最高責任者が杜氏(とじ)と呼ばれ、杜氏のもとで働く職人は蔵人(くらびと)と呼ばれる。酒米の収穫から蔵入り前の秋洗い(道具類を洗って大掃除をする)、蔵入り後の洗米、浸漬、水切り、蒸餃(じょうきょう)(米を蒸す)、放冷、製麹、酛(もと)の仕込み、醪(もろみ)の発酵といった日本酒造りの工程が順を追って丁寧に描かれている。

 日本酒は酵母の作用で米を発酵させて作る。微生物に関する科学がなかった時代に酒造りの仕組みを見つけ出した先人の知恵は時に非合理的な古い慣習に映る。杜氏は「酒造りは命を作ること」と説き、酒蔵での徹底した掃除を命じる。酒樽(たる)を洗う場面でもわずかな汚れも見逃さない。「酒の神様を迎えるために必要」という言葉に反発を覚える主人公。
 母親の死に際にも酒造りを優先した父親に反発する蔵元の息子。だが父親が息を引き取り遺品整理で母親が書き残した幻の酒の銘を見つける。息子は酒造を継ぐことに決め酒の復活を決意する…という話。西条は「賀茂鶴」などが有名ですね。

 ちば合同労組ニュース 第123号 2020年10月1日発行より