映画紹介『海すずめ』

労働映画

映画紹介『海すずめ』

 2016年公開の愛媛県宇和島が舞台の「ご当地映画」。

 主人公の赤松雀(武田梨奈)は宇和島市立図書館で自転車課で働いている。自転車で図書を市民に配達する仕事だ。主人公の雀が図書館自転車課という仕事を通じて故郷とその歴史を知り、成長していく姿を描く。

 雀は夢だった小説家として華々しくデビューしたが2作目が書けず故郷に戻って挫折感を持った中途半端な日々を過ごしている。地元は宇和島伊達家400年祭の準備で盛り上がる。ところが武者行列で復元するお姫様の打ち掛けの刺繍図録が見つからない。図書館上げての大捜索が始まる。そんな折、自転車課の廃止が告げられる。
 お仕事映画を探して見つけた映画で、ウーバーイーツの図書館版かと思って本気で観ていたが、途中で気になりネット検索で架空の話だと気づいた。図書館の本を自転車で届ける仕事はなかなか面白いコンセプトと思ったのですが…。

 ところで伊達家と言えば大半の人は仙台を想像しますが、実は伊達政宗の長男が四国の宇和島藩主に収まり、今も13代目当主がいるそうです。
 個人的な話ですが、数年前に宇和島に行ったことがある。見覚えのある駅前の商店街や宇和島城、遊子水荷浦の段畑などの美しい景色の中を自転車が走る映像は良かった。自転車が物語を進める狂言廻しになっているのは悪くない。若者の夢や挫折、親や友人との葛藤、祭りの行方と刺繍図鑑を探すドタバタなど巧みに織り込まれている。戦争中、図書館司書であった吉行和子が演ずるトメさんと同僚をめぐる悲恋のサイドストーリーが良かった。

 ちば合同労組ニュース 第149号 2022年12月1日発行より