炭坑

労働映画

映画紹介『炭坑』

 1931年の独仏合作映画。1906年に仏北部で実際に起きた20世紀最大の炭坑事故(犠牲者1099人)がモデルですが、映画は、第1次大戦後の仏独の複雑な国民感情を背景に、炭坑は独仏国境地帯の設定となっており、ドイツ人炭坑夫たちが国境を越えて救援に向かうストーリーです。

 映画の公開時期は、ナチスが政権を取るわずか2年前。第1次大戦の敗戦国ドイツは巨額の賠償金を課せられ、大恐慌が直撃しハイパーインフレで経済は破綻。ドイツのルール地方の炭坑も戦後賠償として仏に接収されていました。
 こうした情勢の中で、G・W・パプスト監督は、独仏労働者の連帯による戦争と排外主義の克服をこの映画で謳い上げた。同監督は『西部戦線1918』『3文オペラ』が有名。

 映画冒頭、酒場での独仏坑夫の一悶着から始まる。だが仏側での落盤事故の報を聞いて「同じ坑夫仲間だ」と救援に向かう。仏側炭坑入り口には不安な表情の家族が押し寄せている。そこに独坑夫の救援隊が到着する。ドイツ人を敵視していたフランス人たちは驚きの表情。救援の場面では、救援に来た独坑夫を見た仏坑夫が大戦中の塹壕戦の記憶がフラッシュバックしたり、炭坑のドイツ側から大戦後にできた境界壁を破壊して救援に向かうなど、様々なドラマが展開される。
 炭坑労働の描き方や落盤事故の再現も90年前の映画とは思えない迫力。初期トーキー映画として音響も秀逸。物語は多分に理想主義的でプロパガンダ映画と言ってしまえばそれまでだが、第2次大戦に向かう当時の情勢を考えれば驚嘆の内容だ。個人的には傑作だと思う。機会があればぜひ観て欲しい。

ちば合同労組ニュース 第140号 2022年3月1日発行より