映画紹介『群衆』

労働映画

映画紹介『群衆』

 ゲイリー・クーパー主演の1941年の米映画。時代設定は第2次世界大戦の開戦(39年)前後と思われる。
 新聞社の経営者が交代し大リストラが始まる。解雇通告された記者アンは腹いせに架空の人物ジョン・ドゥーからの投書を題材に最後のコラムを書く。皆に職がないのは腐敗した政治のせいで抗議としてクリスマスイブの夜に市庁舎の屋上から飛び降りる、と。ジョン・ドゥーは「名無しの権兵衛」のようなニュアンスらしい。

 投書は大きな反響を呼ぶ。新しく社長となったノートンは、ジョン・ドゥーの記事で販売部数を伸ばそうと企む。アンの解雇も撤回に。翌日、自称ジョンが新聞社に大勢集まる。その中から選ばれたのは、元野球選手で腕の故障で引退し、失業中のゲイリー・クーパー。

 話題の人物となったジョンのラジオ出演が決まる。ライバル新聞社は、ラジオで偽物であると告白すれば大金を支払うと持ち掛ける。ジョンは、アンが書いた原稿を読むべきか、真実を語るか悩む。マイクを前にして彼は「隣人と団結すべき」とアンの書いた原稿をスピーチ、民衆は大いに感動する。
 スピーチに感動した人びとは各地で「ジョン・ドゥー・クラブ」を作る。ノートン社長は彼を利用して政界進出の野望を持つ。そしてクラブの全国集会での演説直前、「ジョン・ドゥーは偽物」という新聞号外が配布され、もはや彼の言葉を聞くものいなかった。そしてクリスマスイブ当日…。
 タイトルは知っていたが初めて観ました。時代背景も含めて非常に興味深い映画でした。

 ちば合同労組ニュース 第146号 2022年9月1日発行より