遠い一本の道

労働映画

映画紹介『遠い一本の道』

 1977年に公開された左幸子監督・製作・主演の映画。マル生運動が吹き荒れる北海道の国鉄職場が舞台。

 室蘭本線と石勝線の交差する鉄道の町・追分で保線区員として30年働く滝ノ上市蔵(井川比佐志)が妻の里子(左幸子)と共に功績賞を受けるために札幌へ向かう場面から始まる。かつては鉄道に勤めていれば安泰と言われたが、狭い官舎に住む滝ノ上一家の暮らし向きは苦しく、職場では機械化・合理化が進み、「マル生(生産性向上運動)」という名の反組合攻撃が吹き荒れる。保線一筋の半生に誇りを感じるが、表彰されることには抵抗感がある滝ノ上。
 保線職場の合理化は容赦なく進む。かつての保線作業は「ピータ」と呼ばれる先端が平らなツルハシを使い人力で行われた。大変な重労働で労働歌で調子を合わせてツルハシを振るシーンが印象的だ。やがて保線車両や電動式のタイタンパーが導入され、手仕事が減り要員は半分に減らされる。
 職人気質の世代である滝ノ上は要領よく立ち回れず昇進試験も落ちてばかり。やがてマル生運動が吹き荒れ、官舎の仲間と家族も分断される。滝ノ上は「腕や経験で食べていけなんてことがあるものか」と組合活動に熱中する。仲間の事故や娘の結婚話、父と同じ道を選んだ息子、家族会の活動などドラマが進む。

 けっして多くを語らないドキュメンタリー調の映像で厳冬の北海道の保線作業や当時の国鉄職場の雰囲気を伝える記録映像としても秀逸。大地を疾走するSLと原野の保線作業の風景は鉄道ファンも興味深いのでは。合理化問題など現在の状況と重ね合わせて観た。

 ちば合同労組ニュース 第135号 2021年10月1日発行より