エリックを探して

労働映画

映画紹介『エリックを探して』

 先月に続きケン・ローチ監督の作品。荒唐無稽なストーリーですが彼の映画では一番好きかも。仲間と共に人生の危機を脱する郵便配達員の魂の再生物語。神は細部に宿る。仲間との軽妙なやり取りが非常に説得力ある映画にしています。
 主人公は、労働者とサッカーの街・マンチェスターの郵便配達員エリック。2度目の妻の連れ子である10代の少年2人との3人暮らし。失敗続きの人生で憂鬱なエリック。30年前に別れてから会わずにいる最初の妻と再会の機会。しかし気後れして姿を現すことができず動揺した帰路での交通事故。
 心配した配達仲間が励ますもますます自信喪失。エリックは寝室でマンチェスター・ユナイテッドのスーパースター選手エリック・カントナのポスターに向かって「一生後悔するような失敗をしたことは?」と話しかける。すると背後から「君はどうだ?」。振り向くとカントナ本人の姿。カントナは「ひげを剃って会いに行け」とアドバイス。エリックはようやく元妻に話しかけ、距離を縮めることができます。
 一方、息子のライアンはギャングとの関わりを断ち切れずに拳銃を預かる。エリックはギャングに銃を返しに行くが逆に脅され持ち帰る。窮地に追い込まれるエリック一家……
 カントナは人生をサッカーに例える。「すべてはパスから始まる」。彼のサッカー人生で最も輝やかしい一瞬は素晴らしいシュートではなく、仲間を信じてアシストしたパスこそが最も誇らしい、と。「君には仲間がいるじゃないか」
 仲間たちの大作戦でギャングを懲らしめる。「あの家族に手を出すな。逃げても無駄だ。絶対に見つける。なぜなら俺たちは郵便配達員だからだ」。実に痛快です。パブでのサッカー談義もしびれる。

ちば合同労組ニュース 第88号 2017年12月1日発行より