書評『求人詐欺/内定後の落とし穴』(今野春貴著)

本の紹介

書評『求人詐欺/内定後の落とし穴』(今野春貴著)

横行するブラック求人 労働者の教訓は?

 生きるためには働かなくてはならない。わざわざ悪条件の場所を探す人はいない。仕事を探す労働者は自分に与えられた条件で可能な限り好条件の仕事を探すだろう。
そのために資本が提示する労働条件をみながら仕事を探すわけだ。
でも自分を含め、ほとんどの仲間は入手可能な求人票が信用ならないことを知っている。賃金から始まって、労働時間・拘束時間、処遇のあらゆるところまでウソで塗り固められているため何を信用して求職活動をしていいかわからない。自分もこれには相当泣かされた。
多くの労働者がだまされ、無用な苦労を背負わされて死屍累々になったころ、ようやくこうしたことが「求人詐欺」なのだと認知され始めた。
今回紹介するその名もズバリ『求人詐欺/内定後の落とし穴』(今野春貴著)には、現在観測されているさまざまなだましのテクニック、だましのテンプレートともいうべきものが紹介されている。
ウソの求人情報で採用した後はパワハラと恫喝によって精神をくじきからめとる方法はエグイと言うほかない。
だが、無法地帯である新自由主義ニッポンで生き抜くためには知っておかねばならないことばかりだ。少なくともこの本で紹介されている事例は多くの犠牲者を出しており、自分自身もその列に加わることがないようにしたい。
その上で私たち労働者が得るのはこの教訓だ。「資本(会社)を信用してはならない」「考え学ばなければ食い物にされる」「政府は労働者の味方ではない」
これらの教訓は私たちが個人としてより賢く強くなることに役立つ。そう簡単にはだまされなくなるし、場合によっては個人的に反撃できる。だが、資本は強大かつ星の数ほどあるため個人がこれと闘うのには限界がある。
ここから労働者が団結して闘うことが問題の最終的解決につながる。悪事を行う資本に対して団結の力で応酬する。
詐欺でしか労働者を集められない資本には社会を運営する能力も資格もない。求人詐欺の実態を学ぶ中から資本主義とりわけ新自由主義は末期に至り、滅ぼされるべきものである確信を得られる。
労働相談のお供に、また自分や仲間を守るためにも活用できる一冊だと思います。
(組合員T)

ちば合同労組ニュース 第78号(2017年1月1発行)より