実践的に考える職場と労働法/雇用保険の概要と手続き

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雇用保険の概要と手続き

保険料の労働者負担分が2段階UPで2倍に

 雇用保険は、労働者が失業した時や雇用継続が困難となる事態が生じたとき、あるいは、職業教育訓練を受けたときなどに国が必要な給付を行う保険制度です。とはいえ「求職者給付」受給者の割合は全離職者の3割程度で、雇用保険制度が失業時の生活保障として不十分であることは大きな問題です。
 その他の種類の給付としては、失業者が早く再就職することを動機づける「再就職手当」や、教育訓練給付金、高年齢者雇用継続給付金、育児休業給付金や介護休業給付金などがあります。
 また事業主に対して給付する雇用安定事業、能力開発事業もあり、特に新型コロナの関係で「雇用調整助成金」は知名度が上がりました。
 雇用保険は、常時1人でも労働者を使用する事業は原則として適用事業所となります。農林水産業の一部などは任意に加入を決めることが例外的に認められています。
 31日以上の雇用見込みがあり、週の労働時間が20時間以上ある者は一般被保険者となります。雇用契約期間が31日未満でも「更新の規定」があれば、あるいは実際に31日以上の雇用実績があれば適用されます。学生や公務員(1部適用あり)は雇用保険の対象外です。
 労働者を新たに雇用したとき、事業主は翌月10日までにハローワークに届けなければなりません。試用期間でも届出は必要です。届出後に通知書や被保険者証の交付がなされます。会社で手続きがなされていないようであれば、労働者本人が照会することもできます。
 もし雇用保険に加入しないまま働いた場合は、さかのぼって雇用保険に加入できます。原則2年までですが、労働者が保険料を支払っていたことが賃金明細や賃金台帳などで確認できれば2年を超えて遡及適用されます。
 保険料は、昨年10月と今年4月の2段階の引き上げで労働者本人の負担は一般事業で0・6%。農林水産業や建設業は0・7%。21年度の労働者負担は0・3%なので保険料はなんと2倍になっています。社会保険料や所得税などに比べると低額ですが、負担は強まっています。

求職者給付の要件

 労働者の失業したときの基本手当(求職者給付)の受給にはいくつか要件が必要となります。

(1) 離職日以前の2年間に必要な被保険者期間がある(倒産や普通解雇など会社都合の離職は1年)

(2) 失業状態にあること

(3) ハローワークに求職の申し込みをしていること。

 (1)の定年や自己都合退職などの場合は、離職の日以前2年間に被保険者期間が原則12か月以上必要となります。
 倒産や普通解雇などで離職を余儀なくされた労働者(特定受給資格者)、雇止めなどで離職した有期雇用労働者(特定理由離職者)は、離職の日以前1年間に被保険者期間が6か月以上あれば受給資格を得られます。
 (2)の失業状態とは、離職中で就職の意思と能力があり、積極的に就職活動を行っていることが必要となります。
 (3)は、ハローワークで求職を申し込み、離職票を提出して受給資格の決定を受けなければなりません。
 以上の要件を満たすとハローワークが受給資格の決定を行います。
 基本手当を受給できる期間は、原則として離職の翌日から1年間です。手続きが遅れると受給期間が短くなり、給付が途中で打ち切られる場合もあるので注意が必要です。
 基本手当の日額は、過去6カ月間の賃金の合計を180で割った額(賃金日額)の50%~80%です。
 給付日数は、離職時の年齢や被保険者期間で変わります。倒産や普通解雇などで再就職の準備をする時間的余裕がないまま離職を余儀なくされた特定受給資格者などは所定日数が加算されます。コロナ関連で給付日数の延長の措置も設けられてきました。
 65歳以上で離職した労働者は、被保険者期間期間が1年以上の場合は50日分、1年未満は30日分が支給されます。
 求職の申し込みを行った日から失業状態が7日の経過を要する待機期間があります。

4週間ごとに給付

 受給資格の決定後、ハローワークで実施される「職業講習会」「雇用保険説明会」で説明を受けます。約3週間後の初回認定日に失業状態の確認を受けると支給が開始されます。それ以降は4週間ごとに失業認定日があります。
 病気やケガ、妊娠や出産、育児や介護などですぐ就職できないときは、申請することで手続きを最大3年間延長することができます。
 その他の給付制度としては、公共職業訓練施設に入校した労働者には基本手当や受講手当が支給される制度、早期に再就職した場合に支給される「再就職手当」などの制度もあります。

 ちば合同労組ニュース 第155号 2023年06月1日発行より