連載・介護労働の現場から〈スペシャルレポート④〉悪徳サービス

連載・介護労働の現場から〈最新スペシャルレポート④〉

悪徳サービス

●満足サービス

 一般的に介護施設には、レクと呼ばれる体操、カラオケ、塗り絵、書道…。さらには誕生会、敬老会といったイベント。その他、花見、外食、買い物、遊園地など外出する機会もある。
 レクの費用は介護保険からは支払われないので、利用者から徴収してよい。参加、不参加は自由なので、利用者や家族に相談して決める。企画からアテンドまで介護職の仕事だ。
 超人手不足の施設なのでレクはほとんどないと思っていたが、ほとんど毎日レクの予定が入っている。この施設ではレクは「満足サービス(仮称)」と呼ばれ、パートや派遣を含む介護職員1人当たり月3回のノルマがある。ノルマ達成表は休憩室に張り出され、ノルマはボーナスの評価に直結し、最悪ボーナスゼロになることもある。
 レクは、企画から参加者集め、予約、当日アテンドなど、けっこう時間を取られるが、すべて勤務時間外の仕事。当日アテンドだけは賃金が支払われる。
 満足サービスの一番の問題点は、参加費用がめちゃ高額だという点だ。近隣への日帰りだけで1人数万円。昼食は鰻とか懐石料理。利用者が少しでも行きたい素振りをすれば、家族に「親孝行」を押しつける。家族は普段お世話になっている職員の気分を害さないために、ぼったくりと知りながら支払う。
 こんな悪徳サービスの手先を喜んでやる職員はいないが、業務として拒否できない。

●有料の誕生会

 施設での月一回の誕生会。予定表にはケーキバイキング。準備を手伝う。パティシエが出張し、多種類のプチケーキやスイーツ、フルーツが並ぶ。テーブルクロスのないテーブルにクロスをかけようとしたら先輩に止められた。「そこはお金を払っていない人の席だから、クロスはかけない」。ケーキバイキングは有料だったのだ。1人3千円。払えない人はほうじ茶とゼリーだけ。先輩職員は、クロスのない席からケーキを欲しがる利用者に「次からはお金を払ったら食べれるよ」と平気で言う。

●混合介護という権利略奪

 まともな介護職ならこんなグロテスクな誕生会をお楽しみではやれない。ところが、政府は、介護保険サービスだけでなく、全額自費の保険外サービスを組み合わせる「混合介護」を推進しているから、このような光景は近未来、どこの施設でも当たり前になるかもしれない。
 「混合介護」でサービスのメニューが増え、介護職の処遇改善につながるというが、現場では保険外サービスの利用者が優先されるのは目に見えている。その営利目的の手先をやらされ、「金を払えば…」と露骨な差別を強要されるのは他ならぬ介護労働者。
 そもそも、介護保険は公正公平な介護サービスの保障を根幹とした国民皆保険制度、介護を受けるのは国民の権利のはず。介護労働者はその制度下、高齢者の尊厳を守るために、つらい労働に耐えているのだ。国=資本の奴隷ではない。(つづく)
ちば合同労組ニュース 第91号 2018年02月1日発行より