連載・介護労働の現場から〈働き方編2〉自己オリエンテーション

連載・介護労働の現場から

連載・介護労働の現場から〈働き方編2〉

自己オリエンテーション

身体で覚えろ

職場であいさつ終われば、さっそく仕事。職場に回される前に座学研修やオリエンテーションがある施設も増えたが、介護はまだまだいきなり現場の業界。
最初から身体介護はやらせない。まずは、フロア(呼び方は施設によりいろいろだが利用者が居室以外に集まる部屋)での見守り。利用者が椅子やソファ、車いすで座っているのを「何にもしないで観てて」と言われる。お年寄りもこちらを見ている。正直つらい。しかし、それも半日程度。
午後になるとお茶くみや洗濯、掃除、下膳などの仕事を割り当てられる。このような家事的な仕事に対して、普段やり慣れなくてまごまごしていても、やり方などの説明はほとんどない。効率よく、ちゃっちゃとやって当然。
作業が終わって次に何をやる?ところが、さっき指示した職員も見当たらない状態のことも多い。こんなに人手不足なのに、現場職員は、新人ウエルカムの態勢ではない。
たとえ「わからないことは訊いて」と言われ、質問しても、職員が苛立っているのがわかる。業務に追われてるのに、つきまとっていろいろ訊いてくる新人がうっとうしい。なぜ、今日、私が教える係をやらなきゃならないわけという不満がありありと見て取れる。
たった一日で新人教育なんてものはなきに等しいと悟る。辞めてしまう人もいる。いまだにアタマでなく、身体で覚えろの前近代的な世界なのだ。いい加減な口伝えや勘に頼った働き方で、まともな人材は育つはずはなく、介護職の社会的評価も給料も低いままだ。

道順よりマップ

この少子化時代に、身体で覚えろでこき使い、ボロ雑巾のように捨てていくから人が定着しない。もうど根性部活路線はやめて、アタマで考える、合理的科学的で、専門性の高い労働者をめざそう。
そこで最初にオリエンテーション。中学一年生だって、入学式のあとはオリエンテーション。他業種でも常識的だが介護業界はほとんど存在しない。
n0074_03_01a まず、施設の概要や一日の仕事の流れ、職員の役割分担やシフトを知る。そのほうが早く仕事を覚えられ、混乱やトラブルを回避できるのに、オリエンテーション、まずない。
なければ作ろうよ。自己オリエンテーション。まず最初は施設内の平面図、配置図。入手するか作成する。位置情報に対して先輩が教えてくれるのは道順にすぎない。新人はグーグルマップで覚えるというわけだ。介護職員にきいてもダメなら、事務職や理学療養士、医務職なども協力してくれるかもしれない。先輩介護職を飛び越えて他業種と接触することには意味がある。(あらかん)

ちば合同労組ニュース 第74号(2016年9月1日発行)より