連載・介護労働の現場から〈29〉 有料老人ホーム

連載・介護労働の現場から

連載・介護労働の現場から 〈29〉

有料老人ホーム

ハローワークの「介護労働相談窓口」は2ブースあり、一般の労働相談窓口がいつもチョー混みなのに比べて、ほとんど待っている求職者がいない。
手持ちぶたさの係はおしゃべりしながら、登録者への電話かけやダイレクトメール封入作業をやっている。
登録すると毎週、電話や求人情報大量掲載のダイレクトメールが来る。介護フェアといって求人側企業が一堂に介す就活イベントも月に一回はある。それでも人が集まらないのだ、介護業界。
私みたいな中高年リストラから若年ニート層まで、年齢、経験不問。よほどじゃない限り、応募者は全員採用されるといっても過言ではない。

私は、ハローワークや登録した複数の介護求人のウェブサイトのおかげで求人トレンドに詳しくなり、条件を絞った。「週5日フルタイムパート、時給千円以上、社会保険完備、残業代支給。交通費全額支給、制服支給、タイムカード設置、更衣室ロッカーあり、健康診断や研修費は会社持ち…」。当たり前の条件が自分でもおかしかったが、その条件で絞ると、有料老人ホームが数件しかなかった。
当時の有料老人ホームは今ほど多様化していなくて、60~65歳以上なら、元気なうちから入居することもでき、食事・家事、介護や医療連携、通院・リハビリ・文化サークル・旅行・生活相談など、一切合財のサービスがあり、老後は安心。設備やサービス内容によって料金もさまざまであるが、比較的富裕層が多く、お金がなきゃ入れないとよく言われる。
働く立場から言うと有料は、暴力や暴言、奇行、窃盗など行動に問題のある人はお断り、あるいは退去という契約なので、重い認知症はいない。

n0063_03_01a また、介護施設(特養、老健、グループホーム)は支出の7~9割が国からの介護報酬による人件費だが、有料の人件費は5割程度。つまり、人件費を抑えなくても入居金など他で儲かるし、逆に人手が足りないとクレームが来るから、人手不足にしないために、労基法遵守はもちろんのこと、労働条件や時給がいい。

私は考えた。有料老人ホームは入居者自身(あるいはその身元保証人)が選択し、契約する。そして、介護職は介護サービスを提供するだけ。その他の調理、家事、生活相談などは別のサービス係がいる。
これまでの、利用者から介護以外でふりまわされる有象無象、認知症の問題行動がないだけでどんなに楽か。それに、介護に必要なバリアフリー、介護用ベッドやトイレ、入浴設備。冷暖房完備。考えただけで夢のようだ。有料老人ホームで介護のスキルを磨こう。
私は、全国展開している有料老人ホームに応募した。東京近くなので時給は千円。(あらかん)

ちば合同労組ニュース 第63号(2015年10月1日発行)より