連載・介護労働の現場から〈33〉 新人教育

連載・介護労働の現場から

連載・介護労働の現場から 〈33〉

新人教育

介護現場は、大手といえど、どこも人手不足で、職員はタイトなスケジュール下、新人指導を担当するのはすごい負担だ。
マジ、教えているヒマも心の余裕もない。だから、新人はほったらかされ、佇(たたず)んでると、担当外の人から細切れの仕事をいいつけられる。
そんな状態では、仕事のながれも理解できないし、何をやるべきかもわからず、ただ、叱られないようにどう動けばいいのかばかり考えるようになる。
新人教育の目的は、介護のプロになってもらうことだから、教える立場にいる人は、新人を独立した人格として尊重し、自主性をもたせ、判断力がつくように指導するのが肝心だ。しかし、自分の思うように動かしたい、黙って従っていればいいというのでは、何週間、何か月たっても仕事がこなせない。
関口さんは、介護スキルにおいてはベテランだが、教育係としては最低だ。私は、2か月を過ぎた頃には、ここに何年いても、介護を極めることができないと悟った。「金持ちの嫁」は物質的には豊かだが、モラルハラスメントによって精神的にズタズタにされている。
それに、介護が必要になった入居者が気の毒になった。
有料老人ホームは、多額の入居金が必要なので、退職金とか家を売り払った資金をつぎ込んで入居する人も多い。そして、年金は毎月の利用料で使い果たしてしまうから、追い出されると行くところがない。だから、多少のクレームは飲み込んで黙っている。
新人に対しての関口さんのきつい物言いは、当然入居者にも届いている。「お互い、つらい身だねえ」と言われたこともある。こんなきれいで立派な施設でも介護職と利用者は囚われの身。私はだんだん憂鬱になってきた。
百瀬さんが辞めた。表向きの理由は親の介護のためという円満退社。反応は冷ややかで、「やっぱりね。あの人は向かないわね。それに比べてあらかんさんは、もう何年もいるみたい」と異口同音に言う。
tukutuku 百瀬さんは辞めた後も、仕事に関することをメールしてきた。あるときは帰宅する私を駅の改札で待ち伏せ、近くのカフェで何時間も話したりした。精神のバランスを崩している。もう辞めた職場のことを言っても仕方ない。それじゃ次の求職活動に移れない。
いじめの加害者の関口さんや染谷さんも、明らかに弱い人間だ。関口さんは神経症、気分が不安定で、人に対して不寛容だ。三田村さんによると、権威的な夫と子育ての不安がトラウマになっているという。染谷さんは本来自我が弱く、相手を見下すことによって自我を守ろうとするタイプ。
こんなところやってられない。私も辞めよう。(あらかん)

ちば合同労組ニュース 第68号(2016年3月1日発行)より