飲食産業に闘う労働組合を~「すき家」事件に寄せて

組合活動

「ワンオペによる過労死」を許さない

飲食産業に闘う労働組合を~「すき家」事件に寄せて

倒れたまま放置

 大手牛丼チェーン店「すき家」で6月1日、1人で夜勤(ワンオペ)をしていたパート労働者の50代女性が店舗の厨房で亡くなる衝撃的な事実が報道されました。
 すき家は、深夜5時までは複数勤務ですが、5~9時の早朝帯はワンオペでした。女性はずっと倒れたままシフト交代の労働者が出勤する9時まで誰も知られずに放置されていたのです。
 もしワンオペ勤務ではなく2人体制であれば救えたかもしれません。あまりにも悲劇的事件に言葉が出ません。女性労働者が深夜まで過酷に働かなければならない象徴的事態です。今すぐこんな労働環境は変えられるべきです。

「すき家の乱」

 すき家は、吉野家や松屋と並ぶ牛丼チェーン店として拡大してきました。しかし、労働環境の悪化で労働者が次つぎと辞める事態に。ついに2014年5月29日(肉の日)に「ストライキをやろう!」の書き込みがSNSで炎上。
 すき家の船橋工場で勤務していた「ちば合同労組」の組合員が全国唯一のストライキを闘いました。一連の出来事は「すき家の乱」としてネットや雑誌で大いに紹介されました。
 当時は、ワンオペに対して、労働者の能動的闘いによって初めて社会的非難がすき家に集中しました。やがて労働局や警察が取り締まりに乗り出す局面となり、多くの店舗が夜間帯を閉めました。
 しかし、この時の反省もなく、一部の店舗はワンオペを継続し、すき家の体質はまったく変わっていなかったことが今回の事件で明るみになったのです。

過去最高益に

 すき家は、大手外食チェーンであるゼンショーHDが運営しています。ゼンショーには、パワハラを苦に店長が駐車場で自殺した「くら寿司」も傘下にあります。きわめて「ブラック」な体質の会社だと言わざるを得ません。
 今回のすき家の事件でも、当該労働者が「非常ボタンを押さなかった」として「自己責任」をほのめかしています。労働者を徹底的に犠牲にして成り立つ企業です。
 飲食店はコロナ禍が直撃した代表的産業です。しかし、ゼンショーHDはライバルを押しのけ231億円過去最高益の利益を上げています(22年3月期)。
 吉野家の女性差別発言、スシローの虚偽広告などフランチャイズ外食ビジネスの腐敗した現実は過酷な労働環境と一体です。この業界は、連合・UAゼンセンが支えています。本物の労働組合が求められています。

深夜の1人勤務

 今回の事件は夜勤で働く労働者にとって他人事ではありません。介護やコンビニなど深夜帯で働く労働者にとってワンオペの場面はいくらでもあります。体調悪化や事件・事故、一人では対処できないケースは多々あります。
 会社の安全衛生配慮義務はまったく守られていません。一つひとつを職場の闘いにしていきたい。(K)

 ちば合同労組ニュース 第144号 2022年7月1日発行より