職場闘争と労働基準監督署の活用

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職場闘争と労働基準監督署の活用

みなさん、労基署に行ったことありますか?
労働基準法7章は、監督機関や罰則を定めています。監督の仕組みは、国の直轄機関として厚生労働省労働基準局→都道府県労働局→(管内)労働基準監督署があり、これらの機関には労働基準監督官が配置されています。
都道府県労働局長、労働基準監督署長などのポストは労働基準法によって、専門職員として独自に採用された労働基準監督官であることが要件となっており、その罷免には労働基準監督官分限審議会の同意を必要とします。これは、強力な監督権限を持つ監督官の資質の保障と、政治的圧力に左右されない身分の安定のためとされています。
労働基準監督官については、ちょっと前に竹内結子が主演した連続テレビドラマ『ダンダリン/労働基準監督官』で描かれました。
労基署には、監督・安全衛生・労災補償などの部署があります。
「監督業務」は、労働条件の最低条件を定める労基法や労働安全衛生法などの実効性を確保するために、監督官は、立入権限などを活用した監督指導によって、法違反の是正を促し、迅速に労働条件の確保を図るとされています。重大・悪質な事案は司法処分も可能です。
「安全衛生業務」は、労働者の生命と健康を守るため、労働安全衛生法の規定に基き、事業者が労働災害を防止するための具体的措置を実施できるよう専門技術的見地から行政を展開します。
「労災保険・徴収業務」は、使用者の災害補償責任を担保するための制度である労災保険の適用促進や徴収、給付などを行います。

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依存・期待は危険

労働基準監督署は、〈職場闘争や組合の団結強化のために利用する〉というスタンスがいろんな意味で大切だと思います。依存したり期待するのは危険です。
そもそも窓口に座っている相談員は、まず監督官でありません。大半は、非正規職員(約6割!)の総務・人事経験者や社会保険労務士。ハッキリ言って窓口にやってくる労働者を体よく追い返すのが仕事なのではないかと思うような人物がけっこういます。
解雇など判断が難しい案件は、受け付けないか、他の解決手段を勧めてきます。セクハラやパワハラを相談しても「労働基準法違反ではないので対応は難しい」と言われます。
賃金や解雇予告手当の不払い、36協定違反の時間外労働、最低賃金を下回るなど明確な法令違反は、証拠をもとに申告すれば、監督から是正勧告へと動く可能性はそれなりにあると思います。
とりわけ近年は、相談数が激増して、実際問題として対応しきれなくなっている実情があるようです。
監督行政は、〝通達行政〟ともいわれ、厚生労働省の行政通達を基準・根拠に処理されているのが実態です。
ドラマ放映後、労働者の味方を求めて労基署を訪れた人が「竹内結子はいないのか」とつぶやいたなんて話もあるようですが、監督官は、結局のところ、官僚的な対応に終始して、使用者から「労働者の味方か」と言われ、労働者からも「使用者の味方か」と言われているのが現状です。
救いを求めて労基署を訪れ、相談員の素っ気ない対応にショックを受ける人も少なくありません。労基署にとどめを刺されてメンタルヘルスになる話も聞きます。

職場闘争の戦術

とはいえ職場の労働基準法や労働安全衛生法の違反と闘うことは、労働組合の基礎的な活動であることは間違いありません。職場闘争と結びついた労基署の活用はあってしかるべきだと思います。労基署に一度ぐらい行くことも経験の一つだとも思います。
上述のように相談ではほとんど相手にされません。はっきりと違反事実をつかんだ上で是正を求める(申告)のか、違反者の処罰を求める(告訴・告発)が有効です。まずは相談員ではなく監督官を引っ張り出さなければなりません。相談案件として処理されるとうやむやで終わります。
申告は文書で口頭でも可能です。組合で労基署長宛で文書を提出し、回答を求めればなお良いと思います。申告を受けた監督官は、臨検(申告監督)を行うことになります。そこで法令違反が認められた場合には、その是正のための行政指導を行います。法令違反は是正勧告、改善が必要と判断された時は指導票を交付します。
職場のみんなで押しかけるとか、団体交渉と組み合わせるか、職場闘争の戦術として活用は可能ではないかと思います。

ちば合同労組ニュース 第76号(2016年11月1日発行)より