連載・介護労働の現場から〈最新スペシャルレポー⑦〉

介護者を解放する

介護労働者の開き直り

 会社の違法性は、年金事務所の「介入」により、私の社会保険加入や勤務実績は証明され、一か月分の給料は振り込まれた。
 私は退職後、半月で転職した。
 私の退職後も、ドミノ倒しのように職員が次々といなくなり、あまりの過重労働で体調不良の職員ばかり。業務分担や責任のなすり合いで職員の人間関係は最悪になり、入居者や家族からの抗議の怒号は絶えることはない。
 そんな泥沼の戦場のような職場でも、労働者は、どうにか正規雇用で転職して毎月決まった給料が入り始め、それを糧として生活するようになると、スパッとやめて再び路頭に迷うことを簡単には決意できない。介護はどこもブラックばかりと開き直る。
 一方で、入居者はますます悲惨な状況だ。十分な介護がないと、歩ける人が歩けなくなり、立てた人が立てなくなり、やがて座れない→寝たきりとなる。老年期の身体と心は、見捨てられることにより、容易に衰退し、本来は何十年と生きられる人が、わずか数か月もたたないうちにあっけなく亡くなる。
 しかし、寝たきりは、ベッドから動いてもらうことがないのでむしろ介護はらくだ。しかも、重度化で施設への介護報酬が増える。

人手不足でも満床

 経営側は人手不足に応じて、利用者を制限すべきだが、居室の稼働率しか関心がないし、格安有料老人ホームにしか入れない人は多く、どれだけ人が辞めても施設は満床状態が続く。
 10名配置されていた日勤職員がわずか2名となれば、放置どころか、事故や虐待やコンプライアンス違反が起きて当然。それでも、裁判で刑事や民事責任を一番に問われるのは、労働者なのだ。
 もう、「働き続けることが美徳」という時代ではないし、空前の売り手市場。介護の転職は容易だ。「お年寄りが気の毒だから辞めない」のは間違いだ。辞める勇気のない労働者と、経営側に甘い介護保険制度に守られ、ブラック会社はなかなかつぶれない。

人を棄てる国家

 この国の介護を決めているのは政府と財界。厚労省はその枠内をいじくり混乱させているだけの存在。人手不足の一番の原因は、介護報酬の引き下げ、介護職のスキルやメンタルを考慮しない介護保険制度の改悪なのは明らかなのに、出てくる対策は介護ロボットや外国人労働者の導入…。
 最近、政府は人手不足について「介護職員の処遇改善はなされている。マスコミによって介護職のイメージがデフォルメされているからだ」と答え、介護職のイメージ刷新のために、広告代理店経由の広報活動を始めようとしている。
 これは、ますます介護労働者を追い詰める。現場の介護労働の実態とあまりにも乖離した官製フィクションを信じ、人々がサービスを利用したり就職したりしても、すぐさま現実に直面し、その不満と苦情は、広報イメージと異なる生身の介護労働者に向けられるだろう。介護労働者をどこまで痛めつければ気が済むのか。
 介護保険下での介護者は家族の無償労働の代替えではない。介護労働者の十分な人員配置と最低賃金制度を設け、落ち着いた職場環境で、専門家としての知識と経験を積んでもらう。
 同時に在宅で家族などが介護をしている場合も介護報酬が支払われる制度も検討されるべきだと思う。
 介護を受けている高齢者は、先の戦争で「皇軍」「挺身隊」として応召し、青春=戦争だった最後の世代である。
 私は施設で働きながら、お年寄りが人生の最後で日々接する人として、その人生を肯定的に捉えて穏やかに過ごしてしてほしいという強い願いを持っている。老後も国家に棄てられているでは浮かぶ瀬がない
 そのために闘うのは介護労働者の最大の仕事だろう。(おわり)

ちば合同労組ニュース 第94号 2018年05月1日発行より