介護労働の現場から

実践的に考える職場と労働法

介護職の労働条件の現状と課題

介護保険法に労働法違反で指定取り消しの規定

 介護職場は、2000年の介護保険法の施行以降に開設された施設が多く、また要員不足も深刻なため職場環境の改善は大きなテーマです。

労働法規の違反

 2016年労働基準監督年報によると、定期監督における違反事業率は、全体平均66・8%と比較して社会福祉施設は73・8%となっています。違反内容は「賃金の不払い」「休憩が取れない」「サービス残業」「就業規則の周知がなされてない」などが多いようです。
 最低賃金法の違反も全国3498施設のうち267施設、7・63%もあり、少し驚きました。
 神奈川労働局の発表では、介護事業の違反例として、①就業規則の作成・周知がなされていない、②36協定の未締結、③年次有給休暇を与えていない、④衛生管理者や産業医などを選任していない、⑤法定健康診断を実施していない…などが指摘されています。
 介護職場の労働環境の実態に踏まえて2012年に介護保険法が改定され、「介護サービス事業者の労働法規の遵守に関する事項」が加わりました。
 「労働法規違反(労働基準法・最低賃金法など)の罰金刑」「労働保険料の滞納処分」等に該当する者について、都道府県知事・市町村長は、介護サービス事業者として指定等をしてはならない、あるいは取り消し等を行うことが法律で定められました。
 変形労働時間制や36協定について適切な手続きがとられていないケースも多く、要注意です。また休憩については、特に夜勤で代替要員の不足から、あるいは利用者の食事介助のために昼休憩が確保できない例が多いです。
 夜間勤務者の休日確保は切実な問題です。休日は、単に連続24時間の休業を指すのではなく、原則として暦日(午前0時から午後12時まで)の休業をいいます。ですので、いわゆる「夜勤明け」の日は、法定休日には該当しないので注意が必要です。
 「交替制勤務における引継ぎ時間」「業務報告書等の作成時間」「利用者へのサービスに係る打ち合わせ」「委員会・会議の時間」「使用者の指揮命令に基づく施設行事等の時間とその準備時間」「研修時間(使用者の指示・業務上の必要などがある場合)」などはすべて労働時間に該当します。

 

夜間勤務の影響

 休業4日以上の労働災害は「動作の反動・無理な動作」「転倒」によるものがそれぞれ30%を超えています。
 また夜勤と日勤の繰り返し、あるいは夜勤が多い労働者への健康への影響はやはり深刻な問題です。
 施設系では7割の労働者が夜勤を行っています。「体調のリズムの乱れ」「睡眠の質の低下」「疲労回復効果の低下」「社会参加や人的交流の制約」などが指摘されています。さらには「ストレス解消機能の低下」「心の病にかかりやすくなる」も指摘されています。

離職率が高い

 介護労働安定センターの16年度介護労働実態調査によると、仕事を辞める理由としては、全職種では「結婚・出産・妊娠・育児のため」が一番多いですが、介護職では「職場の人間関係に問題が多かったため」がトップです。
 続いて「施設の理念や運営のあり方に不満」「他に良い仕事・職場があった」となっています。労働局の労働相談でも「いじめや嫌がらせ」「妊娠・育休時の不利益」が平均より多いようです。
 介護職の離職率は他職種と比較して高く、また社会福祉法人と比較して民間企業の離職率の高さが目立ちます。離職者の67・2%が勤務年数3年未満です。特に開設から間もない施設での離職率が高く、運営年数が経過すると離職率が低下する傾向にあるようです。
 業界の雇用の特徴として、いわゆる「渡り歩き」が多く、人間関係の問題をリセットする傾向があると指摘する調査機関もあります。
 他方で仕事の満足度や介護関係の仕事の継続意思は、比較的高く5割を超えています。労働条件の悩みや不満は、「人手不足」が一番多く45%。
 労働組合の組織率は、医療・福祉業の推定組織率は6・2%で、全体の推定組織率17・1%を大きく下回っています(厚生労働省「2017年労働組合基礎調査の概況」)。UIゼンセン日本介護クラフトユニオンの組合員は7万1千人余です。
 施設系の正規雇用の比率は65・4%です。他方で訪問系は60・4%が非正規雇用となっています。訪問介護員は9割以上が女性です。全体でも女性の比率は79・5%となっています。
 中途採用が8割を超え、平均勤続年数は5・3年となっています。

ちば合同労組ニュース 第108号 2019年07月1日発行より