パワハラ防止法、来年4月に施行

制度・政策

 実践的に考える職場と労働法

パワハラ防止法、来年4月に施行

パワハラ定義を初めて法律で規定し防止措置義務

 労働相談で「パワハラ禁止法ってないんですか」とよく聞かれるが、今年5月、雇用対策法が改定され、パワハラ防止が法制化された。施行時期は来年4月と思われる(中小企業は2022年4月)。
 パワハラについて初めて法律で規定され、その防止をするための措置を講じる義務を企業に課した。
 近年、職場のいじめ・嫌がらせに関する労働相談が多くなっており、2012年以降、行政機関に寄せられる労働相談で最多だ。厚労省の16年の実態調査によれば、過去3年間にパワハラを受けたことがあると回答した労働者は32・5%に上る。
 改定内容は、雇用対策に関する国の施策・取り組みについて「職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題の解決を促進するために必要な施策を充実する」が新たに加えられた。
 「職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題」がパワハラを指す。
 この規定に基づき、国は、パワハラ対策が義務付けられた。さらには企業が採るべき措置も規定された。

パワハラの定義

 〈パワハラとは何か?〉について法律で初めて以下のように定義された。
 「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」
 「職場において行われる」「優越的な関係を背景とした言動」で「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」がパワハラという定義です。
 「優越的な関係を背景にした言動」とは、上司だけでなく同じ職位であっても発言権の強い人の言動も内容次第でハラスメントになる。人格否定や威圧的な言動は「業務上必要な範囲を超えたもの」に該当する。
 厚生労働省は、パワハラについて6類型化している(イラスト参照)。

【1】身体的な攻撃(暴行・傷害)

【2】精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)

【3】人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

【4】過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)

【5】過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

【6】個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

 この6類型に踏まえたパワハラ防止法の運用指針が定められると思われる。

防止措置の義務

 法律では、

①周知・啓発、②相談窓口などの設置・整備、③発生した場合に迅速・適切な対応

――などの措置義務を規定した。措置を取ることを企業に義務づけるだけで罰則規定などはない。少し注意が必要だ。
 事業主(法人の場合は役員)の責務について、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努力義務が規定された。
 一般労働者に対しても、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる措置に協力するように努めなければならない、と定めた。
 法律の規定は、理念的な内容にとどまる。禁止法ではなく防止法という位置づけだ。とはいえ、パワハラを法律で定義した意義は小さくはないだろう。職場闘争の武器に使うことは十分に可能だ。
 法律ができたことにより行政機関に指導・勧告をさせることも可能となる(労働局)。
紛争解決手続きについても、斡旋より強い「調停」が行われるようになる(セクハラやマタハラの場合はすでに規定されている)。
 企業の法的責任も強まる。就業規則などにパワハラ禁止を明記させたり、使用者にパワハラ禁止を言明させる、などの要求も以前よりは容易になる。職場で反撃の武器の一つにはなる。

ちば合同労組ニュース 第110号 2019年09月1日発行より