中小も60時間超残業割増率5割に

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中小も60時間超残業割増率5割に

時給1000円なら60時間超は1500円に

 4月1日から、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金50%が中小企業にも適用される。中小企業で働く労働者は約3千万人、その影響はかなり大きい。5月に支給される賃金明細をしっかり確認して下さい。
 中小企業かどうかは小売業は資本金5千万円以下あるいは常時使用する労働者数50人以下に該当するかどうかで判断される。サービス業は資本金5千万円以下か従業員百人以下。一般には資本金3億円以下か従業員300人以下が該当する。
 原則として1日8時間、週40時間を超える時間外労働には25%の割増賃金の支払いが必要だ。月60時間を超えた時間外労働は25%から50%に割増率が増加する。2010年の労働基準法改定から制度化されていたが、中小企業については適用が猶予され、それが今年4月1日から適用となったのだ。
 午後10時から午前5時までの深夜労働は深夜割増も加算されるので、月60時間以上の時間外労働をさせる場合は75%の割増賃金の支払いが必要となる。
 時給1000円で月に80時間残業した場合、60時間までの残業は1250円で支払われる。60時間を超えて80時間までの賃金は1500円。60時間越えの部分が深夜労働であれば時給1750円。
 25%の割増分の賃金を支払う代わりにその時間分の有給休暇(代替休暇)を付与することも可能になっている。労働時間を短縮するために代替で休日を付与できるとの趣旨だ。この代替休暇制度を導入するためには、過半数代表者との間で労使協定を結ぶことが必要で、60時間以上の時間外労働があった月の末日の翌日から必ず2か月内に取得させる必要がある。もちろん代替休暇の取得については個々の労働者の意思で決める。

残業代の計算

 割増賃金を計算するためには、まず1時間あたりの基礎賃金を計算する必要がある。パートやアルバイトなど時給制で働く場合には、時給額がそのまま1時間あたりの基礎賃金になる場合が多いが、月給制の場合は別途計算する必要がある。
 次のような計算で求めます。「1時間あたりの基礎賃金=月給÷1か月の所定労働時間」
 月給には、役付手当や職務手当、技能手当などの各種手当も含みます。家族手当や通勤手当、住宅手当、臨時の手当など個人的な事情に左右される手当は除外されます。
 正確な残業代の計算はなかなか厄介ですが、ぜひ一度がんばって計算・検算することは大切なことです。残業代がちゃんと支払われていないケースについては以下のような事例が考えられます。

◆タイムカードを定時で打刻させる

 会社が残業禁止などを理由にタイムカードを定時で打刻させるケースは多い。打刻後の残業については労働者が勝手に残業したと会社が主張する場合もあります。

◆残業の指示を出さない

 就業規則などで「残業する場合には会社の指示が必要」などと定めてあり、会社は労働者に残業を指示を出さず、労働者が勝手に残業をしたと強弁するケースです。

◆固定残業代

 固定残業代制度を採用し、例えば「基本給15万円、30時間までの残業は固定残業代10万円」などの設定で、会社は「30時間までの残業代は支払い済み」と主張します。

◆管理監督者

 管理職の名称で残業代が支払われないケースもあります。いわゆる「名ばかり管理職」です。実質的に通常の労働者と異ならない時には残業代を請求できます。

◆みなし労働時間(裁量労働)

 「働き方改革」関連法などで拡大したのが「裁量労働制」です。実際の労働時間の長さではなく、労使協定などで決められた時間だけ労働したものとみなす制度です。

 その他、フレックスタイム制や年俸制、歩合制なども残業代がごまされることが多いですが、法定労働時間を超過した労働については当然、残業代が発生します。

労働組合の課題

 いずれの場合も残業代を払わないのは労働基準法違反なので、罰則もありますし、労働者には賃金請求権が発生します。
 労働相談や組合員の話を聞くと、多くの職場で多かれ少なかれ労働時間をめぐる争いはあります。個人的な問題にするのではなく、職場全体の、労働組合の問題として捉える必要があると思います。

 ちば合同労組ニュース 第154号 2023年05月1日発行より