映画紹介『私はあなたのニグロではない』

労働映画
映画紹介『私はあなたのニグロではない』
 公民権運動家として著名な作家ジェイムズ・ボールドウィンの未完成原稿を基にしたドキュメンタリー映画(2016年)。メドガー・エバース、マルコムX、キング牧師の回想などを通し米国の人種差別の歴史とその闘いが描かれる。
 パリで執筆活動をしていたボールドウィンは米国へ戻ることを決心する。15歳の黒人女性ドロシー・カウントの写真を目にしたからだ。生徒全員が白人の高校に単身入学した彼女は白人生徒に取り囲まれ、唾を吐かれ嘲笑されながらも毅然とした表情で登校した。その姿に強い衝撃を受けたのだ。
 米ノースカロライナ州で1956年、人種隔離を中止し黒人・白人ともに同じ学校に通う試みが始まる。40人の黒人が白人学校へ転入した。ドロシーはそのうちの1人。実録映像が収録され、瞬きも忘れるほど強い印象を残す。
 メドガーは、全米黒人地位向上協会(NAACP)のミシシッピー州の責任者となり、不買運動やリンチ事件の世論化などに取り組み37歳の若さで暗殺された。ボブ・デュランの名曲『しがない歩兵』は彼の暗殺事件を歌ったもの。
 マルコムは、ブラック・ムスリムのNOI(ネイション・オブ・イスラム)のスポークスマンとして活躍。その後、NOIを離脱し、アフリカ・中東訪問などを通して米国の黒人問題は国際的問題との立場で主張を展開した。65年2月21日、ニューヨークで暗殺。
 公民権運動のリーダーとして63年のワシントン大行進での歴史的演説で有名なキング牧師。彼もまた68年、遊説先で白人男性に暗殺された。
 映画は当時のテレビや記録映像を駆使し3人の軌跡と考察が展開される。