映画紹介『あしやのきゅうしょく』

あしやのきゅうしょく

 兵庫県芦屋市の小学校を舞台に、新米栄養士の奮闘を描いた映画『あしやのきゅうしょく』。芦屋市はすべての小学校に専門の栄養士を配置し、各校で調理を行う「自校調理方式」を貫く。本作は〝お仕事映画〟として、調理現場の「リアルな労働」を丁寧に描いているのが印象的。

 大量調理の現場は、夏の酷暑や冬の冷水など肉体的負担がきわめて大きい。大量の野菜の皮をむき泥を落とす下処理から、巨大なしゃもじを全身で操る釜仕事まで、機械化しきれない「手作業の労働」が厳然として存在する。

 自分の小学校時代を懐かしく思い出す一方で現代の給食が抱える課題にも気づく。食中毒や異物混入を絶対に防がねばならない緊張感。アレルギー対応や宗教上の配慮、「味が変わった」という容赦ない評価。重責と理想の狭間で葛藤する。

 芦屋市は、お金持ちが住む町だから直営方式が可能なのかと思いきや、一食250円の予算は全国平均の枠内。芦屋市には小学校が7校しかなく、劇中にも登場する地元の豆腐屋や精肉店が協力する地産地消の仕組みが支える。納入業者自身が芦屋の小学校出身という連帯感から「多少の融通」も利く様子が描かれる。

 現在、全国の給食現場では効率化とコスト削減の名の下に民間委託が進む。現場では低賃金や不安定な雇用形態が主流となり、労働者の誇りや専門性が軽視されかねない状況にある。ストーリー自体は予定調和的で結末も想定内だが、単なる食育映画や自治体賛美に終わらず多義的な意味を持つ映画かも。学校給食の現場を知りたい方にはお薦めです。

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