本の紹介 『非正規が闘って、勝った』―生コン運転手の闘いの記録

本の紹介

『非正規が闘って、勝った』

―生コン運転手の闘いの記録

止まらぬ非正規化

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p0064_04_01b『絶望の非正規』。こんなタイトルで特集が組まれた週刊『東洋経済』(10月17日)。
派遣法改悪で、非正規増大の深刻さに警鐘を鳴らす。この特集の中で、非正規の増加率ランキングのナンバーワン企業は「イオン」。非正規率は66%だ。ちなみに、ちば合同労組になじみのある企業では、ゼンショーHDが4位、JR東日本が20位だ。名だたる企業が非正規に置き換えている。労働組合にとっても非正規職の増大へ対抗することが急務だ。
そんな状況のなかで非正規労働者が闘って勝った先駆的闘いがある。東京西部ユニオン鈴木コンクリート工業分会だ。

ミキサー車の運転手でつくるこの組合は、一人の組合員の解雇をめぐって争い、ワンマン女社長の横暴に徹底的に闘った。分会三役が解雇されるも、3年間の解雇撤回の闘いで裁判闘争に勝利し、原職復帰。この8月、亡くなった組合員の解雇無効を認める都労委命令をかちとった。
鈴コン分会の闘いは、非正規であっても、ストライキができるし、勝利できる一つの教訓を示した。この鈴コン分会の7年間の闘いをまとめた『非正規が闘って勝った』(東京西部ユニオン編)が刊行されました。
組合員の方も、ぜひ一読をお願いします。ちば合同労組で取り扱っています。B6判256㌻。組合員価格1000円。(K)

ちば合同労組ニュース 第64号(2015年11月1日発行)より

書評『沈みゆく大国アメリカ〈逃げ切れ!日本の医療〉』

『沈みゆく大国アメリカ〈逃げ切れ!日本の医療〉』

市場原理が徹底した介護の実態

n0060_04_01a 5月に出版された『沈みゆく大国アメリカ〈逃げ切れ!日本の医療〉』(堤未果著)を読んだ。

米国の老人医療や介護産業の実態などを暴露し、医療と介護をビジネスにするモンスター「医産複合体」が次に狙うのは日本の医療と介護だ、と警告を発している。
米国の医療費は総額2・8兆㌦(200兆円)。製薬会社と保険会社、そしてウォール街が結託する「医産複合体」は、病気を抱える弱い立場の人々を標的に天文学的な収益を上げている。
日本のような国民皆保険制度がない米国では医療や介護には莫大な費用がかかる。
盲腸手術200万円、ケガで一針縫って30万円……。
近年、投資家のビジネスの種になっているのが介護産業だ。日本同様、第2次大戦直後に生まれたベビーブーマー世代が高齢期を迎え民間老人ホームの需要を爆発的に押し上げているのだ。

米国の介護の実態

市場原理が制圧した介護職場の恐るべき実態とは?
全米500カ所以上の施設を持つある大型チェーンの老人ホーム。
施設の最大の特徴は、介護スタッフが最低以下の人数に抑えられており、時給は平均5・5㌦(600円程度)。一晩で50人以上の高齢者を1人の介護スタッフがみることも日常茶飯事。死亡・虐待事件で訴えられるのも頻繁という。
米国における高齢者介護施設は、営利企業であっても、建設から設備投資、施設内でのサービスから介護関連機器まで莫大な政府補助を受けることができる。このため民間老人ホームが乱立され、それが頭打ちになると、今度はウォール街の銀行と投資家が利権のにおいをかげつけた。

投資家たちの手口

投資家が率いる持ち株会社が医療法人チェーンを設立し、地域の介護施設や老人ホーム、診療所や中小病院をまとめて買収して傘下に入れてショッピングモールのように統合する。彼らの目的は資産価値を高めて株主利益を増やすことだ。
病院では、利益率が低くて医療事故のリスクが高い小児科や産婦人科、救急部門は次々に廃止する。逆に、人工透析や緩和ケアなど儲かるところを充実させるのだ。
老人ホームでは、①スタッフ削減、②給与削減、③入居者の回転率を速める――この3つを徹底的に推進することで事業の資産価値を高める。そして約5年で施設を売却し多額の売却益を得るのだ。
日本でも優良老人ホームのM&A(企業売買)が活発になってきている。以前、村上ファンドの村上世彰が高級老人ホームを買収したことがニュースになっていた。
日本でも政治家や地域ボス、建設業界が福祉利権に群がる構図があるが、それが牧歌的に思えるような重大かつ深刻な状況が迫っているのかもしれない。
――そんな感想を持ちました。介護労働運動からも世の中の核心が見えるのかもしれません。(S)

ちば合同労組ニュース 第60号 (2015年7月1日発行)より

本の紹介『君の心が戦争を起こす』

もっとたくさん戦争反対の声を!!

本の紹介『君の心が戦争を起こす』

十代の頃に読んだ『君の心が戦争を起こす』という本を四半世紀ぶりに図書館で借りてみた。

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著者は羽仁五郎。歴史家で戦争中に逮捕されて敗戦を警視庁の留置場で迎え、治安維持法の廃止で釈放になった人だ。野生動物のドキュメンタリーで有名な映画監督の羽仁進の父親と言った方が通りが良いかも。ちなみに「羽仁進の愛情いっぱい動物記」は素晴らしい絵本です。

冒頭の書き出しはこんな書き出しから始まる。

〈今、世界は、そして日本は、一歩ずつ戦争の方向に向かって進んでいると思われる。誰もがそれを望んでいないので、誰もがそれに手を貸している。そんな不思議な構造の時代になっている〉
〈この本では、戦争が起こる理由、人びとが戦争を望むようにしむけられる仕組み……戦争を起こす犯人の正体と、戦争を防ぐ方法についてなど、ぼくが80年余りの生涯をかけて研究してきたことの成果を書き尽くした〉
初版は1982年でもう30年以上前の本だが2015年のことが書かれている感覚に。心に刺さる。

けっこう内容の濃い本なので目次ぐらいしか紹介できないが「今は平和でハッピーな世の中か」「戦争に向かう君の心の構造」「子どもが子どもでなくなるとき」「もっと軍備をのナンセンス」「戦争の条件はすべてそろった」

n0058_04_02 4月に安倍首相が訪米し、日米防衛協力の指針を改定した。昨年7月の集団的自衛権の閣議決定に基づき、自衛隊の武力行使を前提に日米の軍事同盟を改定したもの。さらに5月中旬には安保関連法案十数本を国会に提出するとのことです。

その柱が武力攻撃事態法の改定です。〝存立事態〟という新たな概念を導入し、国会承認や国連決議もなく全世界に自衛隊を派兵し、米軍以外の軍隊への支援ができるようになる。日本の存立が脅かされる危険があると判断すれば自衛の措置として武力行使が現行憲法のもとでも許容されるという考え方です。

まさしく羽仁が指摘する「イヤだが戦争も仕方ない」の論理です。
戦争に向かう人の心の構造と動きに切り込む『君の心が戦争を起こす」。若い人にお薦めです。(T)

ちば合同労組ニュース 第58号(2015年5月5日発行)より

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