連載・職場と労働法

制度・政策

裁量労働制の適用拡大の動き/解釈変更だけで適用拡大

実践的に考える職場と労働法裁量労働制の適用拡大の動き法律に手を加えず解釈変更だけで適用拡大 実際の労働時間にかかわらず一定の時間を働いたとみなす「裁量労働制」の適用拡大について、年末、厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会で議論が煮詰まっています。なんと法律に手を加えず〝解釈変更〟だけで押し通そうというのです。トンデモナイ話です。捏造データ問題 覚えているでしょうか?  安倍政権時代の2018年...
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ドライバー2024年問題/運転従事者の労災過労死1位

実践的に考える職場と労働法ドライバー2024年問題運転従事者の労災過労死1位が続く 8月22日、名古屋で空港連絡バスが高速道路の中央分離帯に接触・横転して炎上、2人が死亡、7人が負傷する事故が起きた。バスは事故現場の数百㍍手前から蛇行し、乗客の証言では「運転手はぐったりして動かず」、死亡した運転手の体調に異変が生じた可能性と報じられている。 京成バス雇止め撤回を闘う「ちば合同労組」にもコメントを求...
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職場と労働法/高年齢労働者と労働災害

実践的に考える職場と労働法高年齢労働者と労働災害労災死亡の半数が60歳以上の労働者 昨年2021年に労働災害で死亡した60歳以上の高齢者が360人に達し、労災死亡者全体(831人)の43・3%を占めたことが報じられました。過去最高の比率で4割を超えたのは初めてとのこと。 工事現場などで、危険できつい仕事を担う高齢者が増えている現状があり、これに対する安全対策の遅れが背景にあります。 労災死亡に占め...
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育児休業など周知・意向確認を義務化

実践的に考える職場と労働法育児休業など周知・意向確認を義務化 育児介護休業法 4月から新制度 今回は、昨年6月に改定された育児介護休業法が規定する諸制度を確認したい。昨年6月に改定 育児介護休業法は、91年に「育児休業法」として制定され翌年から施行、95年に介護休業が盛り込まれました。 99年に労働基準法から女性労働者の保護規定(深夜業・時間外労働の制限など)が廃止されたことに伴い、育児・介護を行...
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シフト表作成における会社の横暴と対決を

コロナで焦点化 シフト制の働き方シフト表作成における会社の横暴と対決を 最近、シフトをめぐる相談や課題が増えています。 例えば、新型コロナに伴う休業は、原則として使用者都合による補償義務が生じます。しかしシフト労働者の多くが休業補償を得られずにいます。一方的なシフトカットによって事実上の解雇や退職強要が行われている事例も多い。報復的・制裁的なシフトカットも問題です。 「シフト制労働」とは、1週間と...
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金銭解雇制度導入の動き加速/解雇規制(解雇権濫用法理)転覆が狙い

金銭解雇制度導入の動き加速解雇規制(解雇権濫用法理)転覆が狙い 厚生労働省は4月12日、「解雇無効の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」の議論を取りまとめた報告書を公表しました。検討会は2018年6月に設置され、計17回の検討会が行われてきました。労働契約解消金 報告書は、「解雇された労働者が救済される選択肢を増やす」などと称して、新たに「労働契約解消金」の支払いによって労働契約を終了す...
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休業支援金の個人申請について/職場と労働法

休業支援金の個人申請について第6波で長期休業せざるを得ないケースが増加 新型コロナウイルス感染症の第6波の特徴の一つとして、保育園や小学校に通う子どもの感染者数が増加していることがあります。その影響で休校・休園も激増し、あるいは実際に子どもが感染した場合の世話などで最短で5日程度、実際には10日~2週間超の長期休業が必要になる場合も多い。 複数の子どもがいる家庭では家族で順番に感染して長期に及ぶケ...
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会計年度任用職員/毎年雇止め根本矛盾持つ非正規制度

実践的に考える職場と労働法会計年度任用職員について毎年雇止めの根本的矛盾を持つ非正規制度 2020年4月から会計年度任用職員制度が導入されました。年度末を前に各地で雇止めを通告され、地域ユニオンへの相談も増えています。 全国の自治体労働者数は、90年代半ばをピークに市町村合併や民営化などで減少し続け、さらに正規から非正規への置き換えが著しく進行しています。総務省調査では会計年度任用職員は百万人を超...
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年次有給休暇の取得について

実践的に考える職場と労働法出勤率8割の要件は世界的にはほぼ例がない年次有給休暇の取得について 使用者は、労働者の雇入れ日から起算して6か月以上継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し又は分割した10労働日以上の有給休暇を与える義務があります(労働基準法39条1項)。これを「年次有給休暇」と言います。時季指定権・変更権 具体的な取得時季については、労働者が時季指定権を行使すること...
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近年、焦点化する最低賃金制度

実践的に考える職場と労働法近年、焦点化する最低賃金制度当面、全国一律1500円への引き上げを 都道府県別の最低賃金が10月1日から引き上げられました。千葉県は953円。全国平均で28円となり過去最大幅、時給平均930円となりました。全都道府県で時給800円を超えました。とはいえ平均時給930円で2千時間働いても年収200万円に満たない状況です。最低賃金制度とは 「最低賃金制度」は、最低賃金法に基づ...
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職場と労働法/不利益変更に同意しない、合理性を与えない

実践的に考える職場と労働法不利益変更に同意しない、合理性を与えない就業規則による不利益変更 今回は、就業規則の変更による労働条件の不利益変更の問題を考えます。 コロナ問題の発生から1年以上が経過し、労働条件の不利益変更、特に賃金制度の改悪や手当や退職金の改廃に関連して就業規則の変更が提案されるケースが増えています。もちろんコロナで経営が苦しくなったから当然に就業規則の改悪(不利益変更)が許されるわ...
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労働委員会と不当労働行為救済制度

実践的に考える職場と労働法労働委員会と不当労働行為救済制度不当労働行為救済制度の「使用者」概念は広い 労働組合法は、労働組合や労働者に対する使用者の一定の行為を「不当労働行為」として禁止しています(7条)。さらに、禁止の違反について労働委員会による救済手続を定めています。「不当労働行為救済制度」です。 不当労働行為救済制度は、憲法28条における団結権などを保障するために、労働組合法によって立法政策...
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業務起因の感染は労災保険給付の対象です

実践的に考える職場と労働法業務起因の感染は当然に労災保険給付の対象業務上の新型コロナ感染について 新型コロナの感染者数は、集計されているだけでも1日2万人を超える過去最大規模で今後も予断を許さない状況です。業務上の感染について労災保険の相談を受けることが多くなりました。結論から言うと、業務に起因して新型コロナに感染した場合は、労災保険給付の対象となります。 対象となるのは、◎感染経路が業務によるこ...
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裁量労働制適用拡大の動きに警戒を

裁量労働制適用拡大の動きに警戒を 厚生労働省は6月25日、「裁量労働制実態調査」の結果を公表。さらに「これからの労働時間制度に関する検討会」を新設して裁量労働制やその他の労働時間制度の在り方について検討する方針を示しました。 18年1月、裁量労働制の適用対象の大幅な拡大を目指す安倍首相が「一般労働者より(裁量制の人の労働時間が)短いというデータもある」と国会で答弁。しかし、根拠とした厚労省の調査デ...
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実践的に考える職場と労働法 争議行為と賃金について

実践的に考える職場と労働法争議行為と賃金についてスト参加でマイナス人事評価は不当労働行為争議参加者の賃金 ストライキに参加した労働者は、スト期間は労務の提供を停止したのですから、この期間中の賃金請求権はないと考えるのが原則です。 賃金請求権は労務の給付と対価関係にあり、労務の給付が労働者自身の意思によってなされない場合は、反対給付である賃金も支払われないというのが原則です。 これがいわゆる「ノーワ...
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実践的に考える職場と労働法 団体行動権(争議権・組合活動権)

実践的に考える職場と労働法団体行動権(争議権・組合活動権)正当な争議行為の刑事免責・民事免責を規定 今回から「団体行動」について考えます。団体行動権は憲法28条(団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利)に規定されています。通常、団体行動権は「争議権」として理解されることが多いですが、日常的な組合活動も含まれます。 ストライキやピケッティング、 ボイコットなどの争議行為は、集団的な労働義...