公務員総非正規化の制度/会計年度任用職員

公務員総非正規化の制度

20年4月実施 会計年度任用職員

       本年4月1日の無期転換問題と並んで焦点になるのが会計年度任用職員。2017年5月に地方公務員法・地方自治法が改定されて、2020年4月実施で「会計年度任用職員」という採用類型が新設され、「臨時職員」「特別職非常勤」「一般非常勤」などの非正規の事務職員を、これに統一することとなった。
 従来、臨時・非常勤職員は、臨時的・補助的にのみ用いられるという建前であったが、実際には全国の自治体職員の3割を超えるのが現実であり、その多くが自治体の基幹的業務を担っている。ある調査では、全国の自治体で事務補助職員が約10万、教員・講師が約9万人、保育士が約6万人など約64万人。
 「会計年度任用職員」の新設は、臨時・非常勤職員の雇用の安定や処遇改善にその目的があるのではなく、非正規公務員の身分のまま公然と恒常的・本格的な業務に充てることである。
 任用期間はその名の通り会計年度の末日までの最長1年。一般職なので人事評価の対象にもなる。
 フルタイム型とパート型に2区分され、所定時間が1分でも短ければパートに区分される。両者は給与体系がまったく違う。フルタイム型は生活給としての給料と扶養手当や退職手当など各種手当が支給できるとしている。パート型は、報酬と費用弁償に加えて6か月以上勤務者には期末手当のみを支給できる。手当は条例が必要。
 総務省は「任用の更新ではない」「新たな職に改めて任用された」というスタンスを強調している。総務省は、会計年度任用職員という名称は「新たな任用」と言いやすいと考えているだろう。
 だが、なぜ同じ労働者が何年も働き続けるのか。そこに恒常的な業務があり、その労働者が必要な経験や技術、知識が蓄積しているからである。「新たな任用」論は詭弁以外のなにものでもない。
 また公務員は雇用ではなく任用という理由で労働契約法やパート労働法も適用されない。だから無期転換や雇用期間を長くすることを規定する法律もない。パート労働法も非適用となる。
 会計年度任用職員は、毎回の任用のたびに、その採用はすべて条件付きとなる。その期間は1か月。つまり会計年度任用職員は、再度任用されるたびに1か月の試用期間が設定されるのである。初回の使用期間も不愉快だが、毎年4月に試用期間が設定されるというのだ。従前、一般職非常勤職員は更新すれば身分保障と審査請求ができた。実務上も気持ちの上でも本当に不条理だ。
 総務省は、会計年度任用職員は空白期間を置かない運用ができると説明している。しかし、常勤の会計年度任用職員が空白期間をおかずに6か月を超えて雇用されると退職手当請求権が発生する。だからあの手この手で空白期間をつくる動きは続く。
 パート型については兼業を自由化するという。低賃金なのでダブルジョブで稼げということなのだ。
 この重大な攻撃が「非正規にも一時金支給へ」とだけ報道されている。しかし、核心は公務員の総非正規化攻撃である。安倍政権が進める「非正規という言葉をなくす」=非正規の標準化の攻撃である。無期転換問題と合わせて本気で立ち向かなければならない課題だ。(組合員S)

ちば合同労組ニュース 第90号 2018年01月1日発行より

実践的に考える職場と労働法/労働組合の活動に関する法律

実践的に考える職場と労働法

「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の3つの権利を保護

 労働組合の活動に関する法律

 現行法上、労働組合は様々な法的保護を受けています。これは、労働組合が、団体交渉を通じて労働者の労働条件や経済的地位を向上させる機能を承認されており、それを促進するため法律によって一般の団体とは違った特別な地位を与えているからです。
 労働組合への法的保護を定めた最も主要法規は労働組合法です。その基礎をなすのが憲法28条です。憲法は次の3つの権利を保障しています。
 1労働者が団結する権利(団結権)、2労働者が使用者と交渉する権利(団体交渉権)、3労働者が要求実現のために団体で行動する権利(団体行動権)。
 労働組合法は労働組合を次のように規定しています。「労働者が、労働条件の維持改善を主な目的として、自主的・民主的に運営する団体」。
 賃上げや一時金について会社と交渉することは「労働条件の維持改善」です。配転や解雇、懲戒処分など個々の問題について労働組合が交渉することも「労働条件の維持改善」に当ります。会社内に限らず、政府に対し政策の実現を要求したり、反対するなどの政治的社会的活動も労働者の経済的な地位向上を図るため組合に必要な活動です。
 労働条件の維持改善のためには使用者との交渉が必要です。労働組合法は、労使対等の理念に基づく団体交渉の助成、それのための団結(労働組合の結成・運営)や団体交渉の擁護というスタイルになっています。
 この目的規定に沿って労働組合法は、刑事免責や民事免責を規定して組合活動に伴う法的責任を免責し、さらには法人格の付与、不当労働行為救済制度、労働協約の法的効力などを規定して、労働組合に対して団体交渉を援助するための積極的な保護を与えています。
 労働組合法は、事務職や技術職、あるいは正社員や契約社員・パートなど、職種や名称は異なっていても、他人に使用され、賃金によって生活している人は誰でも「労働者」と該当する規定しています。個人請負や一人親方、失業者も労働組合を結成・加入することは可能です。プロ野球やサッカーの選手会も労働組合として労働委員会や裁判で認められています。
 労働者は誰でも、公的機関の許可や届出なく労働組合を自由に設立できます。ただ労働組合法の保護を受けるためには一定の条件が必要です。
①労働者が主体となって組織している
②自主的に運営している。
③主な目的が労働条件の維持改善である。
④組合員の差別的扱いをしない、総会を少なくとも毎年1回開くなどの規定を明記する。
 逆に、使用者の利益代表者が参加したり、使用者から経済的援助を受けると労働組合として認められません。ただ最小限度の事務所の提供や、勤務時間中の協議・交渉は、これにあたりません。
 労働組合が、不当労働行為の救済を労働委員会に申し立てて救済を受ける場合は、上記の要件を満たすかどうかの資格審査が必要となります。

労働組合の活動

 労働組合は、使用者との団体交渉を通じて労働条件の維持改善を図ります。労使双方が合意すれば労働協約を締結します。合意に至らない場合には、争議行為を行います。
 団体交渉を行うには、通常、まず労働組合が、調査や会議を通じて組合員の実態や要望を把握し、労働組合としての要求にまとめます。その要求を使用者側に通知し、団体交渉を求めます。
 使用者は、正当な理由なく団体交渉を拒否できません(7条2号)。また、使用者は単に交渉に応じるだけでなく、労働組合からの要求を検討し、使用者として受け入れられない場合でも、その理由・根拠を示すなど誠実に対応しなければなりません。誠意をもって交渉にあたることが義務付けられています。
 団体交渉の結果、労使間で合意した事項を書面にし、双方の代表が署名または記名押印したものを労働協約といいます(14条)。
 労働協約は、労働者と使用者が個々に結ぶ労働契約や、就業規則よりも強い効力が認められています(16条)。使用者は、労働組合員を労働協約で定めた労働条件に従って雇用しなければなりません。
 労働組合は、争議行為によって要求を実現させることがあります。労働者には「労働者が要求実現のために団体で行動する権利〈団体行動権(争議権)〉があります。争議行為の目的及び手段・方法が正当であれば、刑事上の処罰を免除され(1条2項)、民事上の責任(損害賠償)も免除されます(8条)。
 労働組合の行う代表的な争議行為には、組合員が団結して労務の提供を拒否するストライキ)、意識的に作業能率を低下させる「怠業(サボタージュ)」などがあります。

ちば合同労組ニュース 第88号 2017年12月1日発行より

11・4全国労働者集会の成功へ 結集をお願いします

11・4全国労働者集会の成功へ

組合員の結集をお願いします

 東京・日比谷野外音楽堂で11月5日、動労千葉などの呼びかけで全国労働者総決起集会&改憲阻止!1万人大行進が開催されます。
 11月4~6日に米トランプ大統領が来日し、首脳会談を行うと報じられています。対北朝鮮の戦争会談です。米国や韓国、ドイツなど世界中の労組代表が来日し、共に「開戦反対!北朝鮮を攻撃するな!改憲反対」を闘います。
 ちば合同労組は、組合としてこの集会に賛同し、参加します。組合員全員の参加をお願いします。

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労働学校へご参加を

テーマ 韓国・民主労総の闘い
日時 10月21日(土)13時~ 
講師 金元重(千葉商科大学教授)
 ちば合同労組は団体受講しています。ぜひご参加ください。次回講座は、民主労総のゼネストが韓国における社会変革の展望をきりひらいていることを提起します。

実践的に考える職場と労働法 大焦点「働き方改革」一括8法案

実践的に考える職場と労働法

「生産性向上」で労働法・雇用政策を大転換

 「働き方改革」一括8法案

 解散・総選挙情勢ですが、改憲と並ぶ大焦点が「働き方改革」一括8法案です。安倍首相は「成長戦略」の残された突破口として「働き方改革」を位置づけています。
 「働き方改革」法案は、3月28日に決定された「働き方改革実行計画」に基づいて法案化されています。日本経済再生に向けた「一億総活躍(労異動力の総動員)」として多様で柔軟な働き方を選択できるようにするとして戦後雇用政策の大転換を打ち出し、さらには生産性向上を究極の目的として掲げています。

8時間労働の抹殺

 「残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)」は、07年の第1次安倍政権が提出を断念したホワイトカラーエグゼンプションです。米国ではホワイトカラー労働者の労働法適用を除外する制度で、狭義には労働時間規制の適用除外ですが、それにとどまらない重大性があります。ですので「残業代ゼロ」は正確な批判ではない面もあります。
 法案には「労働基準法第4章で定める労働時間、休憩、休日、深夜の割増賃金に関する規程は、対象労働者については適用しないものとする」と明示されています。労働基準法の労働時間の規定が丸ごと適用除外になることは本当に大変な問題です。
 適用除外の対象業務は、法案には〈業務に従事した時間と成果との関連性が高くないと厚生労働省令で定める業務〉としか書いてありません。
 また裁量労働制とも違って使用者は労働者に業務命令・指示ができるので「朝までにこの仕事を仕上げろ」と指示ができ、深夜割増も残業代も必要なくなります。
 具体的な適用要件は、平均給与額の3倍を上回る水準と規定されているだけです。経団連はかつて年収400万円以上は残業代ゼロが望ましいと主張しました。
 これとセットで「残業時間の罰則付き上限規制」が法案化されています。〝残業規制〟とはまったく逆で、36協定制度をさらに無意味化し、過労死ライン80時間を超える百時間の残業を合法化するものです。労災保険での過労死の認定基準は80時間です。「百時間未満」が法律に明記されれば、過労死・過労自殺について企業は「法律の範囲内で責任はない」と主張できます。

裁量労働制の拡大

 企画業務型裁量労働制の対象の大幅な拡大も盛り込まれています。企画業務型裁量労働制の対象に「事業運営に関する実施管理業務」と「課題解決型提案営業」を新たに加えます。管理職と営業職の大半が対象になりえます。
 過労自殺が起きた電通では3分の1の社員が対象になるとも言われ、悪用されている「名ばかり管理職」「定額固定残業制」は軒並み合法化され、企業の裁判リスクはほぼなくなるとも指摘されています。

個人請負化を推進

 新たに急浮上したのが雇用対策法の大幅な変更です。雇用対策法の目的に「多様な事情に応じた就業」「労働生産性の向上」を盛り込み、国の施策として「多様な就業形態の普及」を位置づけます。これは戦後の雇用政策の大転換です。
 雇用対策法は、雇用政策の基本法として位置づけられる法律で、憲法の勤労権に基づき国の責務による雇用保障や失業対策を定めた法律です。 法案では、雇用対策法の名称を「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用安定及び職業生活の充実等に関する法律」と変更し、働き方改革の理念を体現する基本法として位置づけています。
 経産省の「『雇用関係によらない働き方』に関する研究会報告書」は、「兼業・副業」「フリーランサー」のような「時間や場所、雇用契約にとらわれない柔軟な働き方」が必要だとして、労働者の個人請負化を打ち出しています。
 「労働力をシェアする」との宣伝文句で〈クラウドソーシング〉が話題です。ネットで労働者と業務発注者をマッチングし、働き手と企業の両方から手数料を得るという事業です。企業と働き手の業務契約は個人請負契約。労働基準法も最低賃金法も適用されない究極の雇用破壊です。
 雇用対策法をこうした方向に転換し、社会保障制度や教育訓練システム、税制なども含めて抜本的に変えるべきと主張しているのです。

雇用の徹底破壊

 「多様で柔軟な働き方」の文脈で、地域・職務・時間限定社員を導入するために「同一労働同一賃金」が強調されています。
 「個人請負も含めた多様な働き方を用意するから働ける時にはそれなりに働け。同じ労働時間や同じ内容なら同じ賃金を払う。能力や成果に違いあれば賃金に反映させる」というのです。「非正規雇用の待遇改善」「同一労働同一賃金」の名のもとに雇用を徹底的に破壊しようとしているのです。
 「働き方改革」法案は、ひとことで言えば、雇用と賃金、労働条件を徹底的に破壊しながら、「労働力の一億総動員」「生産性向上」を至上命題として、戦後労働法制と雇用政策の大転換を狙うものです。
ちば合同労組ニュース 第87号 2017年10月1日発行より

改憲、労働法制改悪反対9・30千葉集会

改憲、労働法制改悪反対9・30千葉集会

〝職場から戦争反対を〟

 千葉市民会館で9月30日、ちば合同労組や動労千葉などの呼びかけで「改憲と労働法制改悪に反対する9・30千葉集会」が行われました。この間の地域集会として最大規模の140人が集まりました。
 諸町委員長が主催者あいさつ。戦争と改憲への信任を迫る安倍政権の総選挙情勢に立ち向かおうと訴えました。
 ゲストスピーカーは「日の丸・君が代」不起立を闘った東京都の元教員の根津公子さん。「戦争と関係のない職場はない。とりわけ学校職場は戦争と直結している。だからこそ戦争反対の仕事ができる」と語ってくれました。
 「職場から戦争協力拒否を」と題し4労組が登壇。
 動労千葉が11・5労働者集会の結集をアピール。船橋の病院労組が賃下げや勤務日数の増加などの労働条件の大改悪との闘いを報告。ユニオン習志野は組合結成の経緯と労働委員会闘争の報告を行いました。介護職場分会は、労働者や利用者の権利破壊と戦争は一体の問題と訴えました
 三里塚芝山連合空港反対同盟や内房線と地域を守る会、高校生や大学生、市民団体などの発言を受け、11・5日比谷野音集会への結集を確認しました。

ちば合同労組ニュース 第87号 2017年10月1日発行より

9・30集会 千葉市民会館 改憲・労働法制改悪反対

改憲・労働法制改悪反対!

9・30集会 午後6時から千葉市民会館

 9月30日午後6時から千葉市民会館小ホールでちば合同労組などの呼びかけで「改憲・労働法制改悪反対9・30千葉集会」を開催します。職場の仲間や家族・友人を誘ってぜひご参加ください。
 集会には、ゲストスピーカーとして根津公子さんをお招きします。東京都元教員で「日の丸・君が代」不起立を闘ったことによる停職処分撤回裁判で昨年、最高裁勝訴が確定しました。
 集会発言のメインは「職場から戦争協力拒否の闘いを」と題していくつかの産別・職種の労働者からの発言を準備したいと思います。
 動労千葉は03年のイラク開戦時の春闘で戦争反対を掲げてストライキを行い600本の列車を止め、有事法制に対しては「戦争協力拒否宣言」を発して闘いました。当時、陸海空港湾20労組の闘いが有事法制反対の闘いを牽引しました。こうした闘いこそが戦争や改憲を止める力です。
 そのほか医療・教育・自治体・郵政などの闘いの現場からの発言をお願いしたいと考えています。
 さらには戦争経験者や高校生・大学生などの戦争反対の思いを訴えてもらいたいと考えています。また婦人民主クラブ全国協議会やとめよう戦争への道!百万人署名運動など女性団体・市民団体とも改憲反対の取り組みを進めていきたいと考えています。
 安倍首相は「2020年に新憲法施行」を公言し、先日はJアラートで鉄道が止まり、学校が休校になり、市役所が対応に追われるなどしました。安倍政権は、戦争や改憲に反対する人びとの意識を、危機や排外主義をあおって覆そうとしています。
 今こそ原点に帰って「戦争反対」「教え子を二度を戦場に送らない」「戦争と改憲、徴兵は命をかけて阻むべし」を訴えよう!

ちば合同労組ニュース 第86号 2017年9月1日発行より

ユニオン習 志 野 9・27労働委委員会 組合差別するな!

習志野市は組合差別するな!

ユニオン習 志 野 9・27労働委委員会

 ユニオン習志野の労働委員会は9月27日、ユニオン側の証人尋問が行われます。ぜひ多くの方のご参加をお願いします。日時は9月27日(水)午後1時半から、場所は千葉県庁南庁舎7階です。10分ほど前までには来て下さい。
 争点は、習志野市が既存の組合には市庁舎において組合事務所の使用を許可しながら、ユニオン習志野には使用を認めないことです。さらには市当局は掲示板の使用や郵便物の取り次ぎも拒否しているのです。
 これまで数回にわたり論点整理が行われてきましたが、いよいよ証拠調べに入ります。まずユニオン側から菊池委員長らの証言が行われます。ユニオンは宮本市の尋問も必要であることを主張していますが、宮本市長については、ユニオン側・習志野市側のそれぞれの証人尋問後に判断することになっています。
(9月27日(水)午後1時30分/労働委員会:千葉市中央区市場町1番1号県庁南庁舎7階)

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労働学校へご参加を

テーマ 資本主義とはどういう社会か
日時 9月16日(土)13時~
講師 鎌倉孝夫(埼玉大学名誉教授)

ちば合同労組ニュース 第86号 2017年9月1日発行より

実践的に考える職場と労働法 労災事故と労働安全衛生法

実践的に考える職場と労働法

労災事故と労働安全衛生法

使用者責任の追及と労使の不断の闘争が必要

 『労働安全衛生法のはなし』(畠中信夫著)に「安全規則は先人の血で書かれた文字である」という言葉が出てきます。確かにそういう面がある。
 労働災害防止に関する法律の歴史は、多くの場合、労働災害の発生という結果が先にあって、それに対する労働者や遺族の闘い、あるいは世論の圧力で法令などの規制が行われ、事業主による防止策・対応策の義務づけがなされるかたちで進んできた。
 近年でも、1996年12月に長野県と新潟県の県境にある姫川で土石流が発生、下流で砂防工事を行っていた14人が死亡する事故が起きた。この事故後に初めて「土石流による労災防止のためのガイドライン」が制定され、①事業者による作業場所や上流域の地形や過去の土石流の発生状況などの事前の調査、②土石流の発生・把握・警報・避難などの基準の設定、③警報用・避難用設備の設置―などの措置が定められた。
 99年に茨城県東海村で起きた核燃料加工施設での臨界事故では3人の作業員のうち2人が死亡。この事故で「電離放射線障害防止規則」の大きな改定が行われた。

鶴見と三池の事故

 資本主義初期の時代には、「契約の自由」のもとで児童労働や長時間労働、労働者の酷使が行われた。また雇用主に直接的な故意・過失がなければ責任が問われない「過失責任主義」をタテに労働災害や健康破壊の多くが労働者の不注意・自己責任とされ、補償もなされず生活困窮が生じた。日本の状況については『女工哀史』『ああ野麦峠』などが有名だ。
 こうした労働者の状況に対する内外の批判、あるいは労働者の積極的・消極的な抵抗が生じ、明治維新から40数年後の1911年に初めて日本で工場法ができたのである。
 工場法は、15歳未満と女性の深夜業を禁止し、労働時間を12時間に制限した。これは「労働条件」「権利保護」というより工場労働による年少者・女性の体位低下や結核蔓延を防ぐことが主眼だった。
 工場法はその名のとおり工場だけしか適用されませんでしたが、その後、建設業や貨物運送業などに安全衛生法令は拡大されていきました。
 ようやく敗戦後の1947年に労働基準法が制定され、5章には「安全及び衛生」として安全衛生に関する章が設けられ、「労働安全衛生規則」が定められました。
 ここにはじめて戦前のように対象業種や規模が限定されていた状況から、病院や商店、事務所で働く労働者にも、健康診断、安全衛生教育、休業などの規定が適用されるようになりました。それでも独立した労働安全衛生法は72年まで制定されませんでした。
 60年代、高度経済成長のなかで職場環境が激変しました。そんな時代の63年11月9日、同じ日に歴史に残る2つの労働災害が発生しました。
 国鉄東海道線の鶴見駅(横浜市)で死者161人を出した列車の二重衝突事故。福岡県の三井三池炭鉱における死者458人の炭塵爆発事故です。三池では救出された労働者の9割以上839人も一酸化炭素(CO)中毒となり、長期にわたって労働者と家族を苦しめました。戦後最大の労災事故でした。
 三池の事故は、1960年の三池争議からわずか3年で発生しました。三池労組は「闘いなくして安全なし」を掲げ、坑内の安全が確認できないときは入坑を拒否して闘った労働組合でした。
 しかし、組合側の敗北により大規模な合理化が強行され、保安要員が大幅に削減され、争議前には施されていた炭じんの清掃や水まきも無視されていました。炭じん爆発を防ぐ技術は戦前にすでに確立され、戦後一度も事故はなかったのです。適切な対応があれば事故は防げた。危険が認識できていなかったわけでも、事故防止技術がなかったわけでもなかったのです。
 この2つの労災事故で「生産優先」から「人命尊重」の〝一定〟の流れができ、数年後に労働安全衛生法が制定される。この法律には「事業者は、職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない」(3条)と明確に規程された。

労働者を守る道

 安全衛生法令の歴史をみると、あらかじめ法律が労働者を守ってきた歴史ではけっしてなく、劣悪な労働環境や、労働者の生命が奪われて初めて制定されたことが分かる。
 確かに「後追い的性格」が否めない領域なのかもしれません。しかし、多くの事故は、後知恵で言えば防げるものが大半だ。つまり職場において常態として存在しているのは「安全」ではなく、「危険・有害の要因」だということです。
 これを使用者・企業の責任として明確化し、労使の対抗関係において不断の闘争がなければ事故を減らし、労働者を守ることはできないことを示していると思います。
 労働組合としては何よりも、職場の仲間の中に「事故と弁当は自分持ち」ではなく労働者が団結して資本と闘うことを通してしか自分と仲間を守ることはできないという認識や気持ちをどう議論していくかが課題だと思います。

ちば合同労組ニュース 第86号 2017年9月1日発行より

東京大学で8千人を雇止め 18年無期転換めぐり焦点化

東京大学で8千人を雇止め
18年無期転換めぐり焦点化

 「450万人の衝撃 無期雇用、迫る新ルール」。〈最低賃金の正社員〉が社会に膨大に生みだされようとしている――8・9日経新聞が実態を暴露した。郵便局では8万人の「アソシエイト社員」という形で進む。東京大学での約8千人の雇い止めが大きな波紋を呼んでいる。

トップ大の大量解雇

 2018年4月からの労働契約法施行に伴う「無期転換」 に際して、東京大学当局は、長年働く470人は無期転換するが、約8千人の有期雇用の教職員を雇止めすることを明らかにした。
 雇止めの対象となるのは、①「短時間勤務有期雇用教職員」と呼ばれる大学の事務や、大学病院での看護スタッフなどの約5300人。②「特定有期雇用教職員」と呼ばれる特任の准教授・講師・助教・研究員や、大学病院などの看護師・薬剤師・医療技術職員など約2700人。これに加えて③東大に通う非常勤講師が1200人。①~③をあわせると1万人を超える。
 これまで東大は有期雇用の教職員について雇用期間「上限5年」と3カ月間のクーリング期間を適用してきた。労働契約法が改定され、3カ月のクーリング期間は認められなくなると、これを6カ月に延長する就業規則改定を実施した(これを「東大ルール」などと呼んでいる)。
 批判の的になるや「無期転換ルールと東大ルールは、考え方が異なる」と言い訳に終始。約1万人の労働者の無期転換権の行使を阻むために、大学自らが労働契約法の脱法・違法行為を行う極めて悪質なものだ。
 東大当局は18年4月から「職域限定雇用職員」という非正規教職員を公募すると発表。毎年秋に実施される試験を受け、それに合格すれば、非常勤ながら定年まで働くことが可能になるという。
 ただし、「専門的かつ高度な仕事をする教職員であり、予算の裏付けがある部署に限っての募集」と言われ、大学にとって採算のとれない部署で働く人は、そもそも対象外だ。
 8千人のうち再び大学に雇用される労働者が何人いるかはまったく未知数。大学と組合側は平行線のままだ。

大学が大きな焦点

 現在、全国の国立大学で働く非常勤教職員は約10万人にのぼる。改定労働契約法が施行された2013年、多くの大学で教職員の無期転換を阻むための「5年上限」が次々に計画された。
 しかし早稲田大学をはじめ上限5年枠撤廃の闘いが各大学で巻き起こり、早稲田では15年秋の和解で3千人が無期転換権を認められた。この結果を見て、5年上限撤廃に転換する大学が増えてきた(千葉大学もその一つ)。
 ただ無期転換をすると発表している国公立大学は90のうちわずか6大学にすぎない。ほとんどの大学が様子見の状態と言われている。東京大学の攻防が、全国の大学や無期転換を控えた450万人の労働者の状況に波及していくのは間違いない。
 東京大学はかつて全共闘運動がもっとも活発に闘われた大学でもある。これ以降も、全国の教職員組合の中心的大学となり、大学における新自由主義化の「抵抗勢力」をなしてきた。これをつぶそうというのが今回の大量雇い止めの狙いだ。
 隣の韓国では、非正規雇用撤廃の先頭に学校における非正規労働者がゼネストの先頭に立っている。教育現場での闘いは非常に重要な位置を占めている。この闘いに注目し、支援連帯の輪を広げたい。
(組合員・K)

ちば合同労組ニュース 第86号 2017年9月1日発行より

実践的に考える職場と労働法/育児・介護休業法

実践的に考える職場と労働法

所定労働時間の短縮、残業・深夜業の制限も

育児・介護休業法

 育児・介護休業法は、1育児休業、介護休業の制度、2子の看護休暇、介護休暇の制度、3子の養育や家族の介護を容易にするための残業や深夜業の制限、所定労働時間の短縮などの措置――などを定めています。
 頻繁に制度が変わるので注意が必要です。制度・法律の基本的な知識を知り、有効に活用すれば闘いの大きな武器になると思います。

育児休業制度

 1歳に満たない子を養育する労働者は、開始予定日の前日までに事業主に申し出ることにより育児休業をすることができます。両親ともに育児休業をする場合は、最大で子が1歳2か月まで育休が取得できます。保育所に入れなかったなどの事情があれば1歳6か月まで可能です。
 育休中の賃金支払い義務は規程されていませんが、雇用保険から育児休業給付金が出ます。育休開始前の2年のうち1年以上、雇用保険に加入している労働者が対象です。
 給付額は、一時金などを除く賃金の約3分の2(67%)が支給されます(平均賃金日額×休業日数×67%)。育休開始から半年経過後は50%になります。休業制度と同様に給付金も最大で1歳6か月まで支給されます。
 育休中の健康保険や厚生年金の保険料は免除されます。

介護休業制度

 要介護の状態にある家族を介護する労働者も、2週間前までに事業主に申し出れば育休と同じように介護休業を取ることができます。
 介護休業は、同一家族について3回まで計93日間まで取得できます。介護休業給付金も育休給付金とほぼ同じで最大93日まで支給されます。
 育児・介護休業は、日々雇用労働者は適用除外となっていますが、それ以外はパートや契約社員、派遣社員も取得できます。
 要介護状態とは、病気やけが、高齢などで2週間以上の介護が必要な場合を指します。介護保険法の要介護認定ではありません。対象となる家族は、事実婚を含む配偶者・実父母・配偶者の父母・子、同居かつ扶養している祖父母・兄弟姉妹・孫です。親以外でもOKです。

子の看護休暇

 小学校に入る前までの子を養育する労働者は、1年間に5労働日まで、けがや病気の子の世話や通院のための休暇を取得できます。半日単位で使うことも法律に規程されています。子が2人以上の場合は10日まで取得できます。
 病気は風邪などの短期で治る病気でも、小児ぜんそくなどの慢性疾患でも特に制限はありません。予防接種などもOKです。
 厚労省の通達では、書面の提出に限定されておらず当日、電話で口頭で申し出ることも可能としています。年次有給休暇と違い、使用者は時季変更もできません。有給・無給の賃金の扱いは法律で規定していません。

介護休暇

 要介護状態にある家族の介護を行う労働者は、1年に5日(2人以上の場合10日)まで介護休暇を取ることができます。こちらも半日単位の利用も可能です。対象家族は、介護休業と同じです。食事介助などの生活介護だけでなく、必要な買い物や書類の手続きでも利用が可能です。

残業の制限

 3歳までの子を養育する労働者、要介護状態の家族を介護する労働者が請求した場合、事業主は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させてはなりません(育児・介護休業法の規程)。
 また小学校に行く前までの子を養育する、あるいは家族を介護する労働者が請求した場合、事業主は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、残業は、1月に24時間まで、年に150時間までに制限されます。

深夜業の制限

 小学校前の子の養育、家族介護の労働者が請求したときは、上記と同様に、事業主は午後10時から午前5時までの深夜時間帯に労働させてはなりません。

所定労働時間の短縮

 育児休業をしないで3歳前の子を養育する労働者が申し出たら、所定労働時間を短縮し、労働者が働きながら育児を容易にする措置(育児のための所定労働時間の短縮措置)を講じなければなりません。

家族を介護する労働者に関する措置

 介護休業をしていない労働者からの申し出により、所定労働時間の短縮その他、労働者が就業しつつ家族を介護することを容易にするための措置を講じなければなりません。

 ※

 上記の規程は、それまでの雇用期間が1年未満や、週2日以下勤務の労働者は除外などの規程もありますので、注意して下さい。厚生労働省が出している「育児・介護休業法のあらまし」という分厚いパンレットはそれなりに参考になります。

ちば合同労組ニュース 第85号 2017年8月1日発行より

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