学童保育で民間公募と人手不足

保育を守れ

6割超が年収200万未満、児童数3倍化で教室過密

 「学童保育(放課後児童クラブ)」は現在、小学生の4人に1人が利用。登録児童数は03年の54万人から25年には157万人へと、この20年間約3倍になった。

 他方、現場を支える学童職員の労働環境は深刻な危機に瀕している。保育園の待機児童がここ10年で大幅に減少したのとは対照的に、学童保育の待機児童は1万6千人を超える。その背景には、深刻な低賃金と過酷な労働負荷に起因する人手不足が存在する。

放課後児童支援員

 15年に「放課後児童支援員」という公的資格が新設され、保育士や教員免許の保有者、あるいは一定の実務経験を持つ労働者が中心的な役割を担うようになった。

 しかし、厚生労働省などの調査によると、小中学校教員の月給が46万円、保育士が28万円であるのに対し、放課後児童支援員の月給はわずか19万円の水準にとどまる。週20時間以上勤務する職員の6割超が年収200万円未満であり、常勤職員の平均年収は285万円、非常勤職員では146万円。

 地方の民間学童では、常勤で月給15万円、手取り13万円という事例もあり、夏冬一時金の支給もない職場もある。20年以上の経験を持つベテランも生活の困窮から退職を考えざるを得ないなど、深刻な人材流出を招く直接的な要因となっている。

一教室に児童80人

 業務の過酷さと責任の重さも指摘する。この23年間で児童数が約3倍に増えたのに対し、学童の施設数は1・8倍の伸びにとどまった結果、一つの教室に70〜80人の児童を詰め込む過密化が生じている。低学年児が学校で過ごす時間は年間約1200時間だが、学童保育で過ごす時間は最長1600時間超、学校以上に長い時間を預かる生活の場としての重責を担う。

 だが、現場の運営予算は逼迫しており、おもちゃを職員のポケットマネーで購入して補填したりする状況である。

 学校現場で進められている教員の「働き方改革」により授業間の休憩時間を短縮するなどして下校時間を前倒しする小学校が増えているが、その影響で児童が学童に到着する時間も早まり、学童側の労働密度が上昇している。学校の長期休暇期間気に入ると、通常は午後からの勤務であった時間帯が、午前8時から夜間までの長時間労働となる。

 人手不足で、年間の残業時間が法定上限に迫る300時間を超える職員も存在するが、現場は大学生のアルバイトや高齢労働者など定着しにくい非常勤職員に3分の2近くを依存しており、常勤職員への精神的・肉体的負担が限界に達している。

 こうした状況は、行政が学童保育を軽視し適切な予算投入を怠ってきたことが直接の原因だ。また「ただ預かっているだけ」という社会的認識や評価の低さが職員を傷つけている。安全管理と子どもの自由のジレンマに悩み、夜間まで残業して保護者への事実説明や報告書作成に追われる日々の中で心が折れていく職員が後を絶たない。

富士見市で混乱

 埼玉県富士見市では、それまで公的な社会福祉事業団が委託を受けていた学童保育の運営を市が競争公募へ切り替え民間企業を選定した結果、現場に大混乱をもたらした。

 民間企業への転籍にあたり、各種手当や定期昇給、退職金の仕組みが維持されず、特別休暇も削減される大幅な不利益変更が提示された。30歳時点での試算で生涯賃金が約5千万円も減額される。

 公募時に市は「現在の処遇を下回らないように配慮」と示していたが企業側はその約束を反故にし、正規職員の約3割が転籍を拒否する事態となった。これにより市が定めた配置基準を満たせない恐れが生じた。

 千葉県でも習志野市でも放課後児童会の民間委託による賞与がなくなり年100万円の賃下げや大量離職が問題になっている。

 全国で児童館や学童の管理運営を受託していた労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団でも都内を中心に多数の事業所で職員数を水増しして自治体に虚偽報告をしていた不正が発覚。

 調査報告書によれば、現場の職員や事業所はこれが虚偽であると認識しつつも、深刻な人手不足の中で配置基準を満たさなければ現場が回らないという逼迫した状況から、実態と異なる報告を黙認せざるを得なかった背景が指摘されている。

 学童保育の現場の破綻は、公的事業を市場競争に委ね、労働条件を切り下げてきた必然の結果だ。国や自治体の姿勢を抜本的に変えさせ、常勤職員の確保や処遇改善を強く求めていく必要がある。

ちば合同労組ニュース 第192号 2026年7月1日発行より

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