家庭用ビデオカセット(VHS)の開発プロジェクトを描く。「蓄音機に耳を傾ける犬(ニッパー)」の商標で知られる老舗オーディオメーカー・日本ビクターは、深刻な経営危機に陥っていた。数年後に定年退職を控えた技術者の加賀屋(西田敏行)が、横浜工場のビデオ事業部長に任命される。本社が彼に期待したのは人員整理。当時のビデオ事業部が生産していた業務用機器は不良品が多く、返品率が50%を超える状況で、加賀屋は「首切り役が来た」と反発を受ける。
加賀屋は、事業部の存続と雇用を守るため、社内でも「無謀」と笑われたVTRの開発を決断する。本社幹部の理解は得られなかったが、彼には「家庭でテレビ番組を録画して楽しむ時代が必ず来る」という確固たる確信があった。
ソニーが「ベータマックス」を発表し、ビクターの親会社であった松下電器産業もベータ方式の採用を発表。それでもビクターは「テレビのプロ野球中継や映画を丸ごと収められる基本2時間録画」を可能とするVHS方式の開発を進めた。
結果としてVHSは世界標準をかちとる。自分は小中学校時代に〝ビデオ戦争〟を目撃した世代、やがて勝利したVHSによって街中にビデオレンタル店が増えていった風景が記憶に残る。松下幸之助に直訴するシーンや24時間働き続ける昭和のノリには違和感を覚える人がいるかも。しかし高卒の技術者たちが一丸となり泥臭く試行錯誤を繰り返す姿は感動的だ。技術史的にも面白い。
その後、ビクターはバブル崩壊やデジタル化の波、ノンブランド家電の台頭に飲まれ、リストラを繰り返した末に07年にケンウッドと経営統合。
ちば合同労組ニュース 第191号 2026年6月1日発行より

