勢力圏の再分割をめぐる戦争に終止符を!

新たな戦争と産業総動員の時代
2月28日から始まった米国とイスラエルによるイランへの軍事侵攻は、局地的な戦争の域を超え湾岸・中東全域に拡大している。
ウクライナ戦争、パレスチナ・ガザ虐殺を経て、今年に入ってからのトランプ政権によるベネズエラ侵攻など、歴史は元へ戻らない動きを示しているように思える。
それは歴史の教科書で学んだ「帝国主義の時代」の再来そのものだ。「力による支配」が正当化され、為政者から民衆の意識に至るまで急速に「戦争モード」への適応を迫られている。「戦争反対」の訴えが、「利敵行為」「非現実」だとして非難され、冷笑される事態は本当に深刻である。
戦争と経済的破壊
なぜこれほど戦争が連鎖するのか。「冷戦」終結後、資本主義は地球上の隅々まで拡大した。金融・市場原理の膨張、情報通信技術の発達、中国や東欧、新興国の市場開放、規制緩和と民営化などの諸要因によって形成されたグローバル・サプライチェーンは、一見すると世界を一つに繋いだように見えたが、その実態は「持てる者」による搾取と支配の体系だった。
08年のリーマンショック以降、膨張しすぎた資本主義は逆回転を開始。富の偏在と社会の分断は、国家間の剥き出しの対立へ姿を変え、「自由貿易」の建前も捨て去った。
代わって登場したのは、資源やエネルギー、そして物流網を軍事力で囲い込む「勢力圏の再分割」。〈自由や民主主義のための戦い〉などと称しながら、その実態は資本と国家が生き残るための「領土と市場、資源の奪い合い」だ。
イラン戦争で明らかになった現在の原油・エネルギー取引の実態。石油取引の9割以上は、実際の需要とは無関係な投機目的の金融マネー。戦争で生産量がわずか数パーセント減少しただけで、価格は実需を無視して爆発的に暴騰する。これが世界中の生産現場を直撃している。
原油だけでなくナフサ(プラスチックの材料)や尿素(化学肥料)なども供給不安に。すでに世界中の企業が「不可抗力宣言」を連発。サプライチェーンが途切れ、工場が止まり、物流が停滞。これへの(経済安保的な)対応と悪循環の連鎖がさらに戦争を惹起する。
新たな総動員時代
現代の戦争はまた過去の世界戦争とは異なる「新たな総動員」の様相を示している。
第一次・第二次世界大戦は、国家の全資源を戦争に注ぎ込む「国家総動員体制」が特徴だった。労働者は兵士として戦場に送られ、そして生産力が戦争の勝敗を決した。
この間の経済成長の主力はAI(人工知能)関連産業とされる。この最先端産業が全面的に戦争に組み込まれている。AIに限らず主要産業全体が軍事と不可分になり、経済成長が軍拡によって支えられる。かつてなく軍事と非軍事の境界がなくなっている。この構造がますます戦争を加速している。
労働と戦争の距離
日米首脳会談で高市首相はイラン戦争を肯定・美化。トランプ大統領に自衛隊の派遣を迫られている。
世界中で大軍拡が加速し、徴兵制の復活さえ議論される「戦争の時代」。あらためて「自分の労働と戦争の距離」について考えることも必要だ。
ちば合同労組ニュース 第189号 2026年4月1日発行より
