自治体DXで進む合理化・要員削減

ガバメントクラウド導入で進む職場の分断と孤立、人件費削
自治体DXで進む合理化・要員削減
25年度末(26年3月)を目標に、自治体の基幹業務システムの標準化・共通化と、ガバメントクラウドの推進が、地方自治体の現場に大きな負担と混乱を招いている(地方公共団体情報システムの標準化に関する法律)。
ガバメントクラウドは、行政に関わる業務システムを国が共通化・標準化したクラウド上に集約するITプラットホーム。「行政の効率化」が目的とされるが、自治体の規模や既存システムの違いにより対応の難易度に差があり、デジタル庁の集計では、全国1788自治体のうち、期限内の移行完了が難しいと回答した自治体は半数に及ぶ。
しかし、導入の遅れ以上に深刻なのは、アマゾン支配や、現場労働者の孤立と疎外、そして公務員の削減だ。
アマゾンが独占的
クラウド移行は設計やデータ移行、運用設計を外部に頼らざるを得ない。提供事業者は、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)、マイクロソフトやグーグル。AWSの採用率が特に高い。これにより、住民の個人情報、納税記録、生活保護世帯の動向、児童手当の給付データなどが、米国の私企業であるアマゾンに集中する事態が生じている。
なぜ、これほど「AWS一択」の状態となったのか。デジタル庁の仕様策定チームにはAWS出身者が多数含まれていたことが指摘される。ある自治体のシステム担当者は「国が提示した技術要件は、AWSのサービス名称をそのまま書き写したような内容。人口数万人の小さな町に、世界規模の多国籍企業が使うような超高性能・高価格なシステムが強制された」と語る。
米国には「クラウド法」という法律があり、米国の裁判所が令状を出せば、アマゾンは日本国内にあるデータであっても米国政府に開示する法的義務を負いかねない。

人件費抑制の動機に
総務省の『自治体におけるAI活用・導入ガイドブック』では、デジタル化による効率化で3割の経費削減が可能になると謳う。しかし、現実は逆の実態を示す。
人口わずか2700人の北海道沼田町では、25年度の一般会計予算が過去最大規模の65億円に膨んだ。その主因は、システム移行に伴う約3億円もの経費計上。運用経費も、自前で管理していた時代に比べ「倍以上」に跳ね上がることが判明した。
こうした例は沼田町に限らず、他の小規模自治体で同様の傾向が報告されている。
ガバメントクラウドは、使った分だけ料金が発生する「従量課金制」だ。災害対応や窓口の繁忙期にデータの通信量が増えれば、AWSへの支払いは増大する。
そして膨れ上がった「システム維持費」を捻出するために、「人件費」の抑制が生じかねない。実際、複数の自治体で「今後の採用抑制」や「非正規職員の更新見直し」が検討されている。

変容する窓口業務
生成AIやチャットボット、オンライン申請の普及は、自治体労働者の労働密度を悪化させている。AIが得意とするのは、あくまで「定型的で単純な回答」。
例えば、「住民票の取り方」や「開庁時間」はAIが教えるが、「夫のDVから逃れてきたが保険証を置いてきてしまった」「病気で働けないが、生活保護の申請を断られた」といった個別の事情が絡む切実な相談には対応できない。
簡単な業務は自動化される。だが福祉や税務は個別事情が多いため難しい案件は人間に集中することになる。職員の負担増は、「量」より難易度の上昇が問題になる。
他方、正規職員は「システムの管理」や「デジタル庁との調整」などのバックオフィス業務に追われ、困難化した対面業務には非正規職員に。職場の分断と孤立が加速していく。IT担当者・窓口職員・非正規職員が負担が増えやすい層と指摘されている。
この問題は、公務員だけの問題ではない。民間企業においても、AI導入による「人減らし」と「労働の疎外」は同じ構図で進んでいる。
かつて熟練労働者が長年かけて培ってきた経験や知見がひとたびAIの中に抽出されれば、労働者は用済みとして切り捨てられる。あるいはAIの生成物が正しいかをひたすらチェックする存在に。
AIでは代替不可能な、しかし低賃金で精神的に過酷な対人労働(感情労働)だけが残りかねない状況にもなっている。またAIの判断ミスの責任が現場労働者に押し付けられるケースも増えており、「効率化」の名の下に労働者の負担とリスクだけが増大している。
ちば合同労組ニュース 第189号 2026年4月1日発行より

